稔の弟・雉真勇役の村上虹郎(24)も観る側を泣かせた。やはり安子が好きなのに、その幸せを一心に願い、稔との結婚を許してやるよう千吉に懇願した。

 村上の父親は役者の村上淳(48)で母親はロックやジャズなどをレパートリーとする歌手のUA(ウーア、49)。

 いわゆる14光りの2世だが、村上が自ら両親のことを口にすることはまずない。「自分は自分」という独立心が強い。

 2020年には豊原功補(56)や小泉今日子(55)らが設立した映画製作会社「新世界合同会社」の初プロデュース作品『ソワレ』(2020年)に主演。キョンキョンが惚れ込む若き実力派だ。

到達点のひとつに「ヒロインの母親役」

 空襲で死を遂げた安子の母・小しず役は西田尚美(51)。日本を代表する女性バイプレーヤーだ。昨年7月期ドラマのTBS『半沢直樹』で、開発投資銀行のやり手幹部・谷川幸代を演じたのが記憶に新しい。

 10代のころはファッションビジネスに憧れ、高校卒業後に文化服装学院(東京)に入ったが、在学中にモデルのアルバイトをしたことがきっかけとなって役者の道を歩み始める。

 デビュー作は大鶴儀丹(53)が主演したTBS系『オレたちのオーレ!』(1993年)。いきなりヒロインに大抜擢された。最初から演技力を買われていた。

 評価と人気のどちらも得てから久しいが、それでも朝ドラでヒロインの母親役をやってみたかったという。ヒロインの母親役は女性バイプレーヤーにとって到達点の1つなのかも知れない。

 プロの役者ばかり出演する中で、稔の母・雉真美都里役にはYOU(57)が起用されたことに意外感を持った人もいるようだ。

 もっとも、美都里は安子に理不尽で無礼極まりない物言いをするなど世間からかなりズレた存在。役者としても活動するYOUは規格外の人物を演じると抜群に光る。ハマリ役だろう。

 序盤では目立たないが、雉真家の女中の1人・雪衣を演じているのが岡田結実(21)。実はヒロイン役のオーディションを受けており、最終審査まで進んだが、選から漏れてしまった。

 悔し涙を流していたところ、雪衣役のオファーが。今後、存在感が増していく役柄だ。

 大好評の安子編は2か月で終わってしまう。生き残ったバイプレーヤーたちも多くがその時点で交代する。目が離せない。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立