岡山弁は“クセがちょうどいい”

 漫才ブームとともに、親しみを込めて全国区として受け入れられた関西弁。

 そして2021年になって突然、注目を浴びているのが岡山弁だ。

 なぜ岡山弁がここまで人気になったのか。

 田辺氏は、お笑い芸人の千鳥の影響も大きいと語る。昨年からは冠番組も多く組まれ、今や押しも押されもせぬ大人気芸人だ。

先日、M-1グランプリの1回戦を見てきたのですが、素人出場者の中に千鳥っぽい口調のコンビがけっこういました。皆が岡山出身とも思えませんので、“な~んちゃって岡山弁”だと思いますね(笑)

 これまでも方言人気ランキングが次々に発表されてきたけれど、その基準はたいがい「女子が使ってかわいい方言」であることが多い。

 女子の口から出る方言が「ちょっと田舎っぽい」「あかぬけていない」ところがかわいいというものだ。言ってみれば男性目線からのかわいい方言なのだが、岡山弁はむしろ女性からの好感度が高い。

 田辺氏は、

言葉はきつくて強いけれど、イントネーションが優しくて、押しつけがましさがないですよね。千鳥は岡山弁を話す自分たちのことを“クセが強い”と言いますが、むしろ岡山弁は“クセがちょうどいい”という女性たちがいるんだと想像しています。

 女性は一般的に人間の機微に敏感で、個性とか、本音を察知する力に長けていると思うんです。岡山弁という言葉の中に、そうしたものを感じ取っているのではないでしょうか

 藤井風のルックスと方言のギャップ萌えした人も多いなか「このルックスだから許せるけど、ブサイクだったら絶対に嫌」「しゃべり方を聞いた瞬間に嫌になった」「友達ならいいけど会社にいたらいや」などなど賛否両論あるのもまた事実。

 藤井風や千鳥人気にあやかって、なんちゃって岡山弁を使ってもモテるわけではなさそうだ。

〈PROFILE〉
田辺ユウキ:大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、音楽、アイドル、お笑い、YouTubeネタなどを幅広くリサーチ&考察する。

初出:Webメディア『fumufumu news』(主婦と生活社)