喜ぶことでも隠すことでもない

 性教育というと、伝える親のほうも身構えてしまいがち。どうすれば、子どもにしっかりと伝えることができるのか。

「性は“特別”なことではありません。心臓や肝臓と同じように性器も身体の一部です。例えば“初潮(初めての生理)”のときに『これでもう大人の仲間入りだね』『おめでとう』など大げさに伝えると、子どもは恥ずかしくなってしまいます。

 女の子の生理も、男の子の精通も、人間の身体が成長していく過程で起こるごく当たり前のこと。大げさに喜ぶことでもなければ、こそこそ隠すことでもありません。淡々と受け止め、人間の身体の仕組みを教えてあげればいいのではないでしょうか

 一方で、性の話は人前でべらべらと話すものではないのも確か。性の話がプライベートなことだということも、同時に伝える必要があります。

性は恥ずかしいことではないけれど、大声で話したり、いろいろな人に話したりするものではありません。家族であっても知られたくないこともあります。例えば娘が生理が来たことを、異性の兄弟に知られたくない場合もあるでしょう。

 本来なら、男女区別なく小さいうちから一緒に性の話ができていればそれほど意識することはないのですが、子どもによってもとらえ方は違います。少なくとも親と1対1ならなんでも相談できる関係性を築いておくことがとても大切です

 性の話をするとき、親は常に堂々としていることも重要。例えば突然、子どもに性にまつわる質問をされたとき、なんの心づもりもしていないと、びっくりしてはぐらかしてしまうことも。

「子どもは、親の一瞬の表情をとてもよく見ています。どんなに言葉で取りつくろっても、『えっ』と驚いた顔をすると、『これは聞いちゃいけないことなんだ』と理解します。すると、もう2度と親に同じ質問をしようとは思わなくなるでしょう。また、『そんなこと知らない』『まだ早い』などとはぐらかしたりすると、大きくなって本当のことを知ったとき、親に嘘をつかれた、ごまかされたと、子どもは傷ついてしまいます

『どうして赤ちゃんができるの?』

 子どもに性にまつわる質問をされたとき、どう対処すればいいのか。具体的な例をいくつか挙げてみよう。まずは定番の質問から。

「『どうして赤ちゃんができるの?』と聞かれた場合、子どもはエッチな話を聞きたいわけではありません。コウノトリが運んでくるなどとごまかさず、正しい知識を伝えましょう。子どもの年齢にもよりますが、男性器と女性器があること、精子と卵子が出会って受精し、受精卵が着床して妊娠が成立することを説明するといいでしょう(イラスト参照)。女の子には3つの穴があって、真ん中の穴から赤ちゃんが出ると知って、驚く子も少なくありません」

高橋さんの監修書『小学生だから知ってほしい SEX・避妊・ジェンダー・性暴力』では、小学生の男女を主人公に、マンガでわかりやすくセックスや妊娠の仕組みなどを解説
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