あの相棒じゃなきゃ、売れてなかった

 7歳の年齢差があるものの、錦鯉のコンビ仲は悪くない。大勢がいる飲み会では隣同士の席に座るし、楽屋はもちろん一緒だ。

「別に意図して隣に座ってるわけじゃないんですけどね。ちょっと遅れて行ったらそこしか空いてないくらいのノリですけど(笑)」(渡辺)

 つまり、お互いが空気みたいな存在といえる。ツービートもベタベタした関係性ではないが、良好な間柄だ。

今でも相棒からゴルフに誘われるよ。あいつ、『俺が誘ったんだから』って、俺の分も払ってくれるんだよね。うれしいよね。

 2人で漫才やってたころはよく、相棒の前の奥さんから『うちの人知らない?』って電話がかかってきたけど、『ディレクターと会ってたから飲みに行ったんじゃない?』って俺は随分ごまかしてたの(笑)。

 自分の役割をきっちりやっていれば、仲は悪くならないって。だって、相手に何かを感じてコンビを組んだわけでしょ? そいつを尊敬してあげればいいんだよ。俺なんか、相棒に便乗したようなもんだよ。それで、全盛期のときはある程度まで行ったし」(きよし)

 冒頭でも話題にした、おぼん・こぼんのコンビ仲について、きよしはこう語る。

「(しみじみと)あれも仲悪いんだよなあ……(苦笑)。“俺の方が”“俺の方が”になっちゃってたからね。でも、うちは相棒が認めてくれるから、それがいちばん最高じゃないですか。俺はあの相棒じゃなきゃ、絶対売れてなかったと思う。それに、俺が引っ張ってきた男が“世界の北野”になったんだもん。それは自慢できるよね。俺に先見の明があったってことだから」(きよし)

 “じゃない方”であることに幸せを感じられているのは、相手にも、自分にも、適材適所の才能を見いだせたからなのだろう。

(取材・文/寺西ジャジューカ)

※初出:週刊女性2021年12月21日号/Web版は「fumufumu news」掲載

《PROFILE》
ビートきよし ◎1949年、山形県出身。’80年代、相棒のビートたけしとともに漫才コンビ「ツービート」で一世を風靡する。その後、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)『スーパーJOCKEY』(日本テレビ系)をはじめ、ドラマやラジオなど多方面で活躍。

渡辺隆(錦鯉) ◎1978年、東京都生まれ。東京NSC5期生。2001年「ガスマスク」でデビュー。解散後、「桜前線」を経て長谷川雅紀と2012年「錦鯉」結成。『M-1グランプリ2020』で第4位に輝き、ブレイクする。

『くすぶり中年の逆襲』(新潮社刊 税込み1430円)。49歳と42歳でブレイクした遅咲きのコンビが、幼少期、若手時代、ブレイク前夜、ブレイクのきっかけ、これからの目標などを、2人の漫才形式で明かした一冊 ※週刊女性PRIMEのサイトで記事内にある画像をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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