壱成と妻が陥る“共依存”の関係

 精神科医の斎藤学氏は『家族依存症』(新潮文庫)内で、共依存を「他人に対するコントロールの欲求で、他人に頼られていないと不安になる人と、人に頼ることで、その人をコントロールしようとする人との間に成立するような依存・被依存の人間関係」と説明しています。

 モラハラも共依存の一種で、モラハラ夫は「愛しているなら、これくらいできるはずだ」とルーティーンを要求しますし、モラハラされる妻も必要とされることが嫌いではないので「私が〇〇しなかったから、夫は怒っているのだ」と自分を責めてしまいます。それで二人が満たされているのならいいのですが、斎藤氏は共依存について「互いに相手をむさぼりつくす」関係とし、その結果、「憎みながら離れられない」「軽蔑しながら、いないとさみしい」という、外野から見たら理解されない関係であることを指摘しています。

 壱成は3番目の妻とは公開キスをするなど、公衆の面前でイチャイチャを繰り返してきました。前妻にはモラハラでつらく当たったのに、なぜ今回はラブラブ? と思う人もいるかもしれませんが、これも“共依存”の一種かもしれません。

 特に人生経験の少ない若い女性は愛情表現が多いと「それだけ愛されている」と思って相手にのめりこむでしょう。公衆の面前でオトコとキスするオンナを口説こうとする男性はまずいないでしょうから、公開イチャイチャで女性を孤立させ、自分に依存させることができるのです。人前でベタベタする有名人カップルほど破局も早いイメージがありますが、それらが共依存によるものなら、相手を支配し、縛り付けるのが目的ですから、関係性が長続きしなくてもおかしくはないでしょう。

 斎藤氏は共依存の根底にあるのは「怒りとさみしさ」と解説しています。他人サマの親を悪く言う権利は誰にもありませんが、「がまんできないオトコ」純一を父に持ち、壱成は怒りやさみしさをずっと「がまんすること」を強いられてきたのではないでしょうか。親によってもたらされたさみしさから逃れるための手段がモラハラや公開イチャイチャだとしたら、誰も壱成を責められないでしょう。

 しかし、そうは言っても、壱成自身も子を持つ親です。いつまでも、親がああだからとは言っていられないでしょう。まずは健康を回復させて、仕事をすることが大事ではないでしょうか。「親の因果が子に報う」ということわざがありますが、今度は自分がお子さんを苦しめないために奮起を期待したいところです。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」