箱根カムバックはサングラス&茶髪?

ーー改めて、駿河台大学の箱根駅伝初出場、おめでとうございます&おかえりなさい。

徳本「おかえりなさい、本当ですね(笑)。僕ほど箱根に縛られた人生、ないんじゃね?って思いますよ。面白いよなぁ」

和田「予選会はテンション上がったね。僕らの同期で箱根に監督として戻ってきたのは、徳が初めて。卒業して20年っていう節目に感慨深いね。さらには、監督就任10年目」

徳本「だいたいみんな5年で仕留めてるからね。10年はちょっと長いのかなとは思うね」

和田「どうなの、実際?予選会前は“今年は行ける”という感じはあった?」

徳本「行けると思っている自信のある自分と、もしダメだったらという不安。天秤にかかってるわけよ。2週間くらいずっと眠れなくて」

和田「それは珍しいね」

徳本「今までは“他大学がこぼしてくれたら何とか行けるんじゃないか”という感覚だった。今年は僕の中で、よくて9位、悪くて11位だと思ってた(※注3)。だから、発表時にみんなが泣き崩れるシーンも頭に浮かぶわけよ」

和田「なるほどね。実際、走り終わったタイミングで、だいたいイメージわかるわけじゃん?」

徳本わかる。“行ったな”っていうイメージはあった。ただ、キャプテンの阪本大貴と今井隆生(※注4)はブレーキだった。今井はマスコミに注目してもらって、フワフワしてた。どれだけ力があっても、心理的に乱れていたら本番でブレーキするのがわかるから“(本選で)使わないよ”って言ってる。今井にとってはこの12月が勝負だね」

和田箱根駅伝の大舞台で緊張しないなんて無理だけど、背伸びせず、走れることの喜びをかみしめながら。平常心だね」

徳本「そう。本番で100の力を出すことは本当に難しい。実際、ウチの選手は全員舞い上がっていますから。“お前ら20番だぞ、浮ついてるから”って言ってますね。

 新庄(剛志)監督じゃないけど、優勝なんか目指してなくて。20番でいいですよ、ウチは。今ある目の前のことを積み重ねていくことしかできないんだから。順位が目的じゃない。ただ、ちゃんと自分たちの力を100出すために、100に近づけるために、アプローチかけるだけ。その結果に、もしかしたら順位がつくっていう価値観でやらないと。

 そして、選手たちには襷を最後まで繰り上げなくつないでもらいたい。これもハードル高いんですよ。だいたい区間14〜15位までで走らないといけないから。駒澤や青山学院の天才どもと、1〜2分差しかない。“お前ら2分差で行けるのか?”っていう話だから」

和田徳にはやっぱり金髪、サングラスで箱根に戻ってきてもらいたいけどね」

徳本「なんか、正人が僕のサングラスを作ってくれていて。楽しみもあるんだけど、怖さもある。“コレ、僕にかけさせるの!?”みたいな(笑)」

和田「もちろん、ちゃんとカッコいいのを準備してるから!」

徳本「僕のセンスが問われるから(笑)。でも髪はこのままで。今年のテーマは“自分に付加価値をつける”。ファッションブランドとコラボしたものを着込んで、大学生たちが“何あれ?カッコいい!”ってなるようなスタイルで出ますよ。箱根駅伝は規定がすごく厳しいみたいですけど。そこをどうやってやるかだから」

「パチンコは卒業してからにしてくれない?」

和田「それにしても、もともと監督をやる気もなかったのに、不思議なものだよね」

徳本「3回断ったからね。自分が指導者をやるなんて思ってなかった。現役引退後は起業して経営者になりたかったな、と。でも“なーんか知らないけどまた戻ってきちゃったなぁ”みたいな感じで(笑)。

 今、振り返ってみると箱根駅伝は、本当に自分が成長できる場所だったんですよね。監督になってからも、本当にいろんなことがあって。選手が酒、パチンコ、タバコ、夜な夜な寮を抜け出したりとか……」

和田「これ、弱小校をのし上げた監督、全員言うよね(笑)」

徳本「そう。ウチみたいなイチから始めた大学は、普通の大学生ならよくても競技者としては素行が悪い選手が多かった。プロとして生計を立てていたり。最初は黙認、その後はお願いベース。“パチンコは卒業してからにしてれない?”って(笑)。

 4年目くらいからは“今までのことは水に流す。ただこの先は厳しくする。2回違反を見つけたら退部”って言い渡して。だんだん地域の方に駿河台大学駅伝部が頑張っていると認知されてきたから、応援されるチームになることが必要だった。だから厳しく、バランスよく選手を説得していったんだ」

和田「実際、退部になった選手もいた?」

徳本「パチンコで2人いたね。反発も来た。“監督が無能だ”って僕を引きずり降ろそうするヤツもいっぱいいたし。“いつでも辞めてやるから”って胸ぐらをつかんだことも何回もあったね(笑)」

和田「まあでも、大学駅伝では無名だった大学を、よく箱根に連れて行けるチームに成長させたよね」