前回調査1位の東京を抜いた高知県

「興味深いデータがあります。独身男性は結婚している男性に比べ、寿命が短いことがわかったのです。いちばん短命なのが未婚男性、次に離婚した男性、それから配偶者のいる男性。最も長生きなのが当然ですが、配偶者と死別した男性という結果でした。  ひとり暮らしの独身男性は外食が多く、自炊や運動の習慣がない人も結構います。糖尿病や高血圧といった生活習慣病にかかりやすくなるためでしょう。

 反対に女性の場合、配偶者のいる女性が最も短命。続いて離婚した女性、未婚女性、死別女性と続きます。実は、女性のほうが孤独への耐性が強く変化への適応力もあるからではないかとみています」

 生涯未婚率ランキングでは、'15年の前回調査で1位だった東京を抜いて高知県が女性のトップとなり、衝撃を与えた。

 その理由について、未婚化をめぐる問題に詳しい『ニッセイ基礎研究所』の人口動態シニアリサーチャー、天野馨南子さんはこう分析する。

「結婚が集中する年齢は20代後半。そうした若い女性の多くが故郷を離れ、東京などの都市部へ移り住んでいます。

 実際、高知県ではコロナ前の10年間で男性の1・5倍の女性が県外へ流出超過しているのです。適齢期の女性がいなくなるわけですから、当然、新規の結婚が発生しづらくなります。

 加えて高知の場合、離婚率も全国トップ。一家の長男がいちばん偉くて、女性は家事や育児をこなしつつ家計補助的に働けばいいという“長男文化”も根強く残っています。結婚に夢を持てなくても不思議ではありません

 若い女性が都会へ流出するのは、必ずしも華やかな暮らしに憧れているからではない。地元が好きで、子ども好きで、結婚願望も強い。それでも故郷を離れざるをえない事情がある。

「生まれ故郷を出ていった女性たち2300人にアンケートを行ったところ、転出理由は“やりがいのある仕事がない” “職種の幅が狭い”との回答が圧倒的でした。

 ある女性は、児童養護施設で働きたいけれど、地元には適当な大学がないので仕方なく県外に進学、そのまま就職したと話していました。

 人と接するのが好きで営業職に就きたかったのに、地元企業では“男の仕事だ。女性のメーカー営業職はいない”と言われ、やはり他県で就職した女性もいます。地元で働き、家庭を築く夢を描いても、それがかなわない仕事の実情があるのです」(天野さん、以下同)

 女性活躍が絵に描いた餅である限り、未婚率は上がり、故郷を捨てる女性も増え続けることだろう。その先に待ち受けるのは人口減少という名の「地方消滅コース」だ。

未婚率上昇は少子化の主要因です。少子化で人口が減るにつれ、高齢者の支え手は減り、おひとり様は激増します。女性のほうが長生きですから、自分で稼いで老後を乗り切らなくてはなりません。国や自治体は表面的な婚活支援にばかり力を注がないで、根本的な原因究明と対策も講じるべきです」

荒川和久さん ●独身研究家、コラムニスト。ソロ社会とソロ文化および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、多数のメディアで活躍。