「あまりむちゃな使い方をする人は、自分の周りにはいないと思います」とは、電機メーカーに勤務する営業職のAさんの弁だ。

「うちの会社は文言的には“私用利用の禁止”と“有料サイトの登録禁止”の2つだけ。自分は得意先への電話のほかに、乗り換え案内と、業務に関するYahoo!ニュースは会社携帯で見ています。それらは業務内のことだと思っていますから。

 おそらく会社側は、ログを取っているだろうけど、どんなタイミングで確認しているかはわかりません。事故や、告発などがあればごっそりと調査するのかも。通話経歴を含めて会社側に握られていますから、変なことはできません(苦笑)」

 会社によってレギュレーションが異なるため、一概にくくることはできないが、Aさんの「会社側に握られている」という言葉が表すように、“監視されている感”が拭えない社員は一定数いる。

 また、前述したGPSによる位置情報を把握されることに、冒頭の会社員のようにアレルギー反応を示す人も多い。いくら労務管理とはいえ、自分がいる場所を把握されるのは落ち着かないだろう。コンビニに出かけたとして、「〇日の△時に離席してましたよね?」などと言われるのでは─なんてビクビクしてしまう。

業務時間以外の位置情報確認はルール違反

 ちなみに、法的にはGPSによる業務時間中の社員の居場所を把握することは、許容内と考えられている。その一方、業務時間外の位置情報の確認は、プライバシーの侵害として違法になるケースもあるという。

「弊社に問い合わせをされる企業さまの中にも、どこまでプライバシーやセキュリティーの管理を行っていいのかを気にされる方は多い」と篠原さんが言うように、企業サイドにとってもセンシティブな問題といえそうだ。だが、過敏になる必要はないと続ける。

「われわれも社用スマホを利用しているのですが、管理者は情報システムを扱うごく一部の人。管理者も一日中位置情報をチェックしているわけでもないので、ずっと監視されているわけではありません」

 また、あくまで位置情報の確認は、プライバシー侵害の範囲でないことが問われる。つまり、社員の位置情報を常に監視するといった使い方は、黒に限りなく近いグレーとなるため、企業サイドのルール違反。過剰に、「監視されているんじゃないか?」と思う必要はないというわけだ。例えるなら、配送されている荷物の状況を私たちが確認するようなもの。きちんと荷物が届けられているかを確認するためにチェックするのであって、四六時中、荷物の運送状況を見ている人はいないはずだ。

「位置情報の確認は、社用スマホを紛失してしまったという際、会社の内部情報などが漏れないよう遠隔操作でメモリーを削除するなどに使われるのが一般的です」(篠原さん)