デビュー作が最高の適役、「持ってる人」南果歩

 そもそも、デビュー作となった映画『伽倻子のために』からして「この役をやるために生まれてきた」と思えるほどの運命的な作品。

 在日韓国人の主人公を「日本女性」が演じるというのが条件だった。両親が韓国人で、2年前に日本国籍を取得していた彼女は最高の適役だったのだ。

 また、昨年のクリスマスには『朝だ!生です旅サラダ』(テレビ朝日系)にゲスト出演。この連載でも取り上げた、娘を亡くした直後の神田正輝(71)の言動が注目された回だ。偶然ながらそういう場に居合わせることとなった。

 こうしたことから感じられるのは、南が人一倍、スターとしての運を持ち合わせているのではということ。2度の離婚について彼女は、

《人生、努力すればどんなことも乗り越えられると思っていましたが、一人ではどうにもできないこともあるのです》

 と振り返るが、実は「芸能人生」もまた「努力」だけで成功できるものではない。運はもとより、時には不運をも引き寄せてしまう星のもとに生まれたような人が文字どおり“スター”で居続けられるのだ。デビュー作といい、2度の結婚相手といい、彼女はこの「引き寄せ力」を「持ってる」人なのである。

 そんな彼女が還暦を前に思いついた生き方が「乙女オバさん」というあたりも興味深い。還暦を越えてなお、活躍し続ける有名女性にはこの「乙女オバさん」タイプが目立つからだ。

 南を可愛がり、本を書くことをすすめたという瀬戸内寂聴さんしかり、黒柳徹子デヴィ夫人、さらには森光子さんなどもそうだった。乙女とオバさん、運と不運、そんなギャップをものともせず、今を楽しめる人こそが生き生きとして人生を前に進んでいけるのだろう。

 もしかしたら、彼女はもう1回くらい結婚するかもしれない。それも意外な大物と。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)