心肺機能を維持できないほどの栄養失調

 近江八幡署によると、司法解剖の結果、母親の死因は低栄養と判明。奈々容疑者は監禁容疑については「間違いありません」と認めており、母娘の生活実態や搬送を拒んだ理由などについて捜査を進めている。

事件を捜査する滋賀県警近江八幡署
事件を捜査する滋賀県警近江八幡署
すべての写真を見る

「母親は心肺機能の維持にも支障をきたすほどの栄養失調だった。低栄養を引き起こした背景についてはさまざまな可能性を視野に入れて慎重に調べている。また容疑者が救急搬送を妨害したから亡くなったのか、あるいは妨害がなくても助からなかったのかによっても捜査の方向性は変わってくる」(捜査関係者)

 母娘は生活費をどう捻出していたのか。収入はなかったはずだが、周辺住民によると市内に頼れる子どもや親族が複数おり、自家用車も売却していないなど、食べるのに困っていた様子はうかがえなかったという。

 複数の周辺住民らの話によれば、母親はそもそも摂食障害だった可能性はある。

 厚生労働省のデータによると、拒食のケースでは必要な量の食事をたべられなかったり、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど患者によって症状はさまざま。10〜20代の若者がかかることが多く、女性の割合が高いが、年齢や性別などを問わずだれでもかかりうる病気という。

 国内で医療機関を受診している摂食障害患者は年間約21万人とされ、治療を受けたことのない人も多数いるとわかっている。周囲から「ひどく痩せている」と心配されても、自分ではちょうどいいと思っていたり、病気とは思っていないこともあるという。

 事件の約10日前に母親を見かけた住民は、

「痩せすぎていて深刻な病気を患ったのかと思うほど人相が変わっていた」

 と話す。

 事件当日、母親は自分で119番通報した。同居家族がいるのだから体調異変を伝えて救急車を呼んでもらうこともできたはず。娘に119番通報させなかったのはなぜか、真相解明は捜査の進展を待つほかない。

 仕事や通学をしない子どもを『ニート』と呼ぶのは34歳まで。奈々容疑者に勤労意欲がなければ中年無業者になる。薄れゆく意識の中で母親は何を思ったか――。