「遺言書リスク」を払拭できるように

 たとえお金持ちでなくても、遺産の分け方を決めるのは実はとても面倒。遺産がそもそもいくらあるのかを調べなければならず、また、実家を売るのか売らないのかで家族が対立するケースも少なくない。

 その点、遺言書があればもめずにすむし、遺言書を書く際に財産の一覧も作ることになるため、夫の死後に遺産を調べる手間も省ける。

 だが遺言書は、正しく書かなければ無効になってしまう。さらに死後に見つからなかったり、誰かに内容を改ざんされたりするリスクも。そのためにあるのが公証人が遺言書を作成・保管する「公正証書遺言」という制度だが、10万円前後の費用が発生する。

 そこで活用したいのが、2020年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」だ。遺言書を法務局に保管してもらうことで、紛失や改ざんを防げるように。また法務局の人が、遺言書の中身をチェックしてくれるため、無効になるリスクも低くなる。

 費用は基本的に申請手数料3900円のみ。自分や子どもの負担を減らすためにも、夫には遺言書を書いてもらいたいもの。まずは、お近くの弁護士や行政書士などに相談してみては。

妻の相続は「税金がかからない」からこそ要注意!

 夫の遺産は、妻と力を合わせて築いたものと考えられているため、夫婦間の相続では税金がかかりにくくなっている。「配偶者の税額軽減」という特例で、最低1億6000万円まで相続税がかからない。その点、妻は優遇されているのだが、だからこそ注意すべき点がある。

 税金がかからないからといって、よく考えもせずに夫の遺産を自分がすべて相続すると、自分が死んだあとに子どもが痛い目に遭うのだ。子どもへの相続では「配偶者の税額軽減」が使えず、さらに子どもは夫の遺産と自分の財産の両方を相続することになるため、相続税が高くなりやすい。

 自分の死後、子どもに必要以上の負担はかけたくないもの。そのためには夫が亡くなったときに遺産の分け方を慎重に検討することが大切だ。必要に応じて税理士にも相談のうえ、子どもが損をしない引き継ぎ方を考えよう。

【要注意】夫の遺産を妻が相続するときは税金面でとても優遇されているが、妻の死後、その財産を子どもが相続するときはしっかり課税される。