しかし、よく考えたらこの離婚は失敗色の濃いものでもあった。相手は歌舞伎の名優・坂東三津五郎で、不倫の末の略奪婚と報じられ、1年7か月でスピード離婚。

 彼女はその理由について「子どもが産める環境じゃなかった」などと説明した。先妻がすでに跡取りを産んでいたから、ということのようだが、それは結婚前からわかっていることだ。

 そこで当時、梨園への憧れだけで結婚したのではともいわれた。実際、梨園は面倒なしきたりも多い世界だ。例えば、三田寛子のように、夫の不倫を何度も許しながら家を守り、子どもたちを歌舞伎役者に育てた人に比べると、梨園の本質を承知のうえでの覚悟が足りなかったのではないか。

 ただ、近藤にはそういう和テイストへの憧れがずっと感じられる。フジテレビ時代には、局アナたちによるアルバムで自ら作詞した『yotaka』という曲を歌った。江戸時代の街娼である「夜鷹」を題材にするセンスが話題になったものだ。

 そして今回、詐欺に遭った商品は1万2千円の着物である。前出の『バイキング〜』では、

「着物ってニッチなものじゃないですか、それを詐欺行為に使われたっていうのはむかっ腹が立ちましたね」

 と、怒りをぶちまけていた。

 この「ニッチなもの」をわかりやすく言うと、一部に熱烈な需要があり、高価でも売れる商品。着物好きの彼女にとっては「尊い」ものであり、だからこそいっそう許せなかったのだろう。とはいえ、そんなことは騙す側にとっては関係がなく、彼女のような人こそ騙しやすいと思ったのではないか。

 そんなわけで、この騒動は教訓的でもある。人は好きなもの、得意だと思っていることで、意外と失敗しがちなのだ。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)