なんの心の準備もなく、父親の死に直面した如月さん。

「母のことが気にかかっていて、父親に目を向ける余裕がありませんでした。母の要介護認定が出たら、父のこともちゃんと考えようと思っていたのに、間に合わなかった」

 そう後悔をにじませる。

「きょうだいも夫もいない私は、残された母の介護や、実家の片づけをひとりで背負わなくてはいけない。何をどうしたらいいのか、気持ちが追いついていかなかった」

空き家になった途端に加速度的に傷む

 途方に暮れる中、最初の問題は実家に取り残されて餓死寸前だった4匹の老猫の行き先。保護団体や老猫ホームを当たるも、ハードルが高く断念し、2匹の飼い猫がいる自宅に連れ帰るほかなかった。

 東京と熊本を行き来しながら空き家になった実家の整理を始めたが、物の多さにまたも呆然とする如月さん。古いステレオやテレビ、服など、捨てることを嫌った父親の持ち物が、大量に残されていた。

 廃棄するにも持ち込み場所や日にちが限られているため、一向に片づけは進まない。父親が亡くなった寝室に足を踏み入れれば、『たったひとりで死なせてしまった』ことへの自責の念に苛まれ、片づけの手が止まった。

もう着ない服や古い家電など、父親の荷物で物置状態になった実家の部屋(提供/如月サラさん)
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「救いだったのは、預金通帳類の保管場所を父親から聞かされていたこと。そういう点は几帳面な人でした」

 実家を維持するだけで、固定資産税や電気代、水道代などがかかる。ガスとNHKは解約し、2台あった車は1台を残して1台は廃車に。

「今までは、人の住まない家にも手がかかるなんて考えもしなかった。けれど、空き家になった途端、家は加速度的に傷んでいくのです」

 如月さんは今も月に1回、実家に1週間滞在して、部屋の換気や施設に入った母親のお見舞いなどを続けている。最悪の事態になる前に、父親との距離を縮めておけばよかったと振り返る如月さん。

「こまめに連絡をとって、健康状態やいつもと違う様子はないかを確認することが、親の見守りにつながります」

 地域によっては、新聞や宅配飲料の配達時に高齢者の見守りをしてくれるサービスも。また、“うちはまだ先の話”と思っている人に如月さんが強くすすめるのは、地域包括支援センターの下調べ。

「地域ごとに設置され、高齢者サポートに関するさまざまな相談が無料でできる。実家の最寄りの地域包括支援センターの場所や連絡先だけでも、確認しておくといい」

 父が亡くなって1年。後悔、悲しみ、そしてひとりで抱える問題の大きさに立ち止まりながらも乗り越えてきた。

「『捨てるなら僕が死んでからにして』と言っていた父に『死んだから捨てるよ』と語りかけながら片づけています」