軽い怪我はおいしいんだよね

 好きなタイプやアダルト女優の好みは「熟女」。だからといって10歳年下の妻のことを〈かみさんもそろそろ熟女の対象に近いかな〉と、ここでもツッコミたくなるが、落ち込んだりしたときに顔を見ると、〈“なんか、まぁ、俺は大丈夫かな”って思っちゃうことあるね〉というところがかわいい。

上島竜兵さんと妻・広川ひかる(2009年)
上島竜兵さんと妻・広川ひかる(2009年)

 全編にわたる上島竜兵ワールド。『お笑いウルトラクイズ』の「バス吊り下げアップダウンクイズ」で死にかけそうになったり、リュックサックに仕掛けられた爆弾が爆発して後頭部が焼けて500円ハゲができたり、人間大砲的なもので発射時に全裸になったり(〈服が綺麗に脱げるよう仕込むのに2時間くらいかかるの〉だそうだ)などなど、お笑いに関するエピソード、志村けんさんビートたけしへの思いなども、もちろん満載の一冊だ。

〈軽い怪我はおいしいんだよね〉とサラリといい、熱湯や熱々おでんなどの際のリアクション芸は、「殺す気か?」「訴えてやる!」、そして「これが俺の芸風だぁ!」といった、最後の一言が大事で、そこにこだわると明かす。

 終盤、ここまで2人のメンバー(肥後克広・寺門ジモン)、ビートたけし、志村けんさんなど、いい人とばかり巡り会え、運にも恵まれていたと感慨深く記す竜ちゃん。

 ダチョウ倶楽部のメンバーで最初に天国に行くのは〈やっぱ俺かな。俺だろうな〉と、〈優しい感じのうすら笑い〉を浮かべながら想像していた。

 いつかこの世を去ったとき、顔にひげを書いて豆しぼりの格好でいるものの、熱々おでんにリアクションしないから、やっとみんなが“竜ちゃん死んじゃったんだ”って実感したりね、と笑いの文字を添え、〈ホント、俺の葬式はみんなで笑えばいいんだよ。わーって宴会すればいいんだよ。一番楽しいんだもん〉と綴るが、

「笑えないよ、竜ちゃん!」

 とツッコむことが、精一杯だ。そんなふうに思ったとき、少し笑って、少し泣いた。

(文/太田サトル)