原作にはない、病に侵される父子の放浪の姿、さらには映像化に伴うBGM(ピアノの旋律)効果など、映画版『砂の器』に心を打たれた人は多数。また、ドラマ版7作品については、読者の中でも“好きな砂の器”が分かれる模様。

「中居くんを俳優としてはじめて認識した」(40代女性)といった声が挙がるように、原作でも重要人物である天才ピアニスト・和賀英良を主役においた中居正広版『砂の器』(TBS系)も、アンケートでは人気を集めた。

市原悦子が評したビートたけしの演技

「私が手がけた『砂の器』は、玉木宏さんを主演に置きました。彼は、映画版では主演の丹波哲郎さんを慕う部下の刑事、森田健作さんが演じたポジションでした」

 部下の視点から『砂の器』を描いた竹山版のように、作り手によって見せ方が変わるのも、『砂の器』の面白いところ。また、竹山さんはこんな裏話を明かす。

「実は、脚本が完成した際、橋本忍さんから「見せてほしい」という連絡があった。橋本先生としても、『砂の器』は自分の聖域のような作品だったんでしょう。父子の描写など、かぶっていないか確認したかったようです」

 続く2位は、「情死に見せかけた殺人計画だったことが時刻表などのトリックを通して解明するところ」(50代女性)といった支持を集めた、清張初の長編推理小説にして社会派ミステリーの代表作『点と線』(テレビ朝日系)。

 時刻表トリック、刑事が捜査のために各地を回る、といった要素が詰め込まれた本作は、トラベルミステリーの先駆的作品と呼ばれ、この作品を機に清張ブームが沸騰する。意外なことにテレビドラマ化は、'07年の一度だけ。しかし、主演を務めたビートたけしのインパクトもあって、読者の多くが票を投じた。この作品の脚本を手がけたのも竹山さんだ。

「この作品に出演した市原悦子さんは、たけしさんと共演することをとても楽しみにしていました。どんな芝居をされるのか興味津々だった。後日、市原さんに感想を聞くと、彼の『何にもしないうまさ』をしきりに話していた。何もしないことはなかなかできない。そう彼女は舌を巻いていた」

 そして、3位に名を連ねたのは、「魔性の象徴的女性像」(50代女性)、「女性が権力のある男性を手玉にし、のしあがっていくところ」(40代女性)と、多くの女性票を集めた風俗サスペンスの名作『黒革の手帖』だ。