「家柄が違う」釣り合わないと親が反対

 ともやさん(27歳、仮名)は、婚活を始めて1年になります。高学歴で上場企業にお勤めなので、お見合いは組めるのです。しかし、ともやさんには、恋愛経験がほとんどなく、交際に至っても、それをうまく前に進めることができませんでした。

「なかなか素敵だな、この女性と結婚したいな、と思う人は現せませんね。そもそも僕は、女性を好きになった経験がないので、好きになるというのがどういう感覚なのか、わからないんですよね」

 そんなことを言っていたともやさんですが、みなみさん(26歳、仮名)とお付き合いに入ってからは、様子が変わってきました。

「仕事をしていても、“今、みなみさんは、何をしているかな“とか、考えてしまいます。彼女と話しているときの笑顔とかも思い浮かんで、気がつくと、みなみさんのことばかりを考えているんです。人を好きになるって、こういうことなのかな、と。こんな気持ちになったのは、初めてのことなんですよ」

 そうして、初めて“真剣交際“に入ったのです。そこから1か月が経ち、気持ちがますます結婚する方向に向かっていったので、それを地方で暮らすご両親に伝えました。結婚を喜んでくれるのかと思いきや、ご両親が反対をしてきたのです。その反対理由が、彼女の家柄でした。

 みなみさんのお父様は開業医で、ご親族もお医者様ぞろい。サラリーマン家庭のともやさんの家とは、家庭環境が違いすぎる。家柄が釣り合わないというのです。

 ともやさんの父親は言いました。

「経済的に何不自由なく、どちかといえば贅沢をして育ってきた女性を、お前が養っていけるのか」

 ともやさんの母親は言いました。

「結婚は当人同士だけではなく、家と家の結び付きもあるのよ。そんな立派な家のお嬢さんをもらったら、こっちはずっと肩身の狭い思いをしなきゃいけないじゃないの」

 両親に反対されたことと、その理由をみなみさんに伝えると、彼女は、言いました。

「私はそんなに贅沢三昧をして暮らしてきた感覚はないよ。行きたい学校には行かせてもらったけれど、大学時代、お小遣いは自分でバイトをして稼いでいたし。結婚は、私たちの問題なんだから、私たちの気持ちが結婚に向かって進めるなら、それでいいんじゃない?」

 結婚は、周りから祝福されてしたいもの。ことに、両親には喜んでほしい。思わぬ反対で、へこんでいたともやさんですが、そこからは、ご両親へ、なぜ自分が彼女を選んだのか。これまでの経緯や、彼女の人柄を丁寧に文字に綴り、手紙を出しました。

 そして、その手紙を読んだご両親から、連絡がありました。

「2人でこの結婚を決めたというのなら、その気持ちを忘れずにいい家庭を築いていきなさい。ともやが初めて好きになった女性なのだから、何があっても一生をかけて守っていきなさい」

 親は子どもを愛しています。だからこそ、心配をしすぎるところがあるのでしょう。しかし、こちらの真剣な思いを伝えれば、わかってくれるはずです。

 そして、結婚はご自身が決めること。学生時代は、親から学費などを払ってもらい、傘の下にいたのですが、社会に出てご自身で働くようになったら、もう独立した考えを持っていていいし、それが本来のあるべき姿ではないでしょうか。

 ともやさんとみなみさんは、後に成婚退会をし、それぞれのご両親にご挨拶に行ったようです。