もっとお互いを尊重していく道はあってよいはず。喫煙文化は一つの人生観として許容されてもよいのではないかと思われます。

ストレスなく喫煙文化を受け入れられる社会を

 もっとも最近では健康志向が加熱し、不健康な行動を拒否する考え方が過度になる余り、精神的に不安定になる問題も起きています。例えば、健康に悪い食べ物を避ける考えが強すぎて、それで精神的に疲弊するといった問題です。そうした考え方に伴った問題は「オルトレキシア」と呼ばれています。健康を追求するあまり、かえって精神を病んでしまうとしたら本末転倒です。

 日本の調査によると、身体的な健康も大切ですが、心の健康に悪影響を与えるほど健康を気にしすぎるのは避けたいという人も多いようです。インターネットリサーチのネットエイジア株式会社が2022年3月に1000人の男女(20歳~69歳)を対象にウェブで行った「健康に関する意識調査」では、健康第一に息苦しさを感じるという回答が約半数(49.5%)を占めました。健康志向はありますが、それがいきすぎて気持ちが追いついていない人もいるということでしょう。

 基本的には喫煙をするときには健康を意識すべきというのは確かなのでしょう。スモーカーはノンスモーカーと一緒に過ごすときのマナーを大切にすることは意識したいところ。

 同じくネットエイジア社が2022年4月に現在たばこを吸っていない20歳~69歳の男女1,000名を対象に実施したアンケートがあります。周囲の迷惑にならないようマナーを守っていればたばこを吸っても良いと思うか聞いたところ、『そう思う』は66.3%、『そう思わない』は33.7%となったそうです。マナーの遵守が文化になっていけば、ノンスモーカーの“心の壁”も解消していくのかもしれません。

 そうした前提の上で、何度も繰り返すように喫煙がその人の嗜好によるものと考えると、スモーカーとノンスモーカーがいかに共生できるか考えるのは大切なこと。世界禁煙デーを一つのきっかけに喫煙文化についてあらためて考えてみるのはいかがでしょうか。

<星良孝 ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト>

参考文献

たばこ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b4.html

Brown RCH. Resisting Moralisation in Health Promotion. Ethical Theory Moral Pract. 2018;21(4):997-1011. doi: 10.1007/s10677-018-9941-3. Epub 2018 Nov 8. PMID: 30613183; PMCID: PMC6304181.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30613183/

Peretti-Watel P, Legleye S, Guignard R, Beck F. Cigarette smoking as a stigma: evidence from France. Int J Drug Policy. 2014 Mar;25(2):282-90. doi: 10.1016/j.drugpo.2013.08.009. Epub 2013 Sep 12. PMID: 24315503.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24315503/

ネットエイジア調べ 「健康第一主義に息苦しさを感じる」50%、「健康のための取り組みは自身で自由に選択したい」95%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000011314.html

ネットエイジア調べ  5月31日は“世界禁煙デー” 非喫煙者の認知率は14%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000011314.html