1977年5月に現在の夫・上沼真平氏との披露宴、記者会見に望む上沼恵美子
1977年5月に現在の夫・上沼真平氏との披露宴、記者会見に望む上沼恵美子
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 5年ほど前に上沼から離婚を申し出たものの、旦那の反対や手続きが面倒で諦め、週末だけ会うことにしているようだ。だがその距離感が心地よく、今ではかえって関係が良好になり、会う頻度も上がっているのだとかーー。

 この関係は、本人は名言していないが、おそらく、10年ほど前から急速に浮上してきた「卒婚」という結婚生活の形態なのだろう。

 卒婚とは、知恵蔵mini(朝日新聞出版)によると、「結婚という形を維持しながらも、夫と妻が互いに干渉せず、それぞれの人生を自由に歩んでいくという夫婦関係」で週末のみ会う上沼夫婦にまさにあてはまる。

 ウエディング研究家・戸板女子短期大学服飾芸術科教授の安東徳子さんによると、
卒婚が急速にポピュラーになってきた背景として、「女性が自立し、経済的にも男性を頼らずに生きていける人が多くなったこと」を挙げる。

「旦那に経済的に依存する妻が多かった時代では、“私の人生従うばかり”と恨みが積み重なって熟年離婚というケースが多かったですが、現在では50代60代で夫婦関係を“味わいきった”夫婦が次のステップに行きます、というニュアンスで卒婚を選ぶことが多いですね。愛情は薄れたけれど、憎しみ合うというほどではないので、いいお友達のように安定した関わりを持っていくイメージでしょうか」(安東さん)

 上沼も手続きが面倒ということで離婚は踏みとどまったというが、やはり旦那への愛情はゼロではなかったからこそ卒婚を選んだのかもしれない。また、

「またある程度地位がある方たちが、世間体を保つというか、別居をやわらかいポジティブに表現することもありますね。私たちは結婚を超越しましたというブランディングのように」(安東さん)

 確かに上沼ほどの大御所タレントになると、結婚という次元を超えたスゴみと“トークの肥やし”という両方を得るのかもしれない。

 一方、前出の安東さんは、卒婚を検討する上での注意点も挙げる。

「支え合って生きることが必要な老後なので、卒婚で旦那との関係を整理しても良いのかは慎重に考えるべきでしょう。また財産の整理でトラブルになることもあるのでそこも気をつけた方が良いでしょう」

 新たな人生ステージに進み、ますます迫力を増すおしゃべり女帝のトーク。そして今後「卒婚」がシニアの夫婦にどれだけ浸透していくのかは興味深いところだ。

【お話を聞いたのは】
安東徳子さん
ウエディング研究家/戸板女子短期大学服飾芸術科教授。
一般社団法人日本ホスピタリエ協会代表理事、株式会社エスプレシーボ・コム代表取締役。30年の長きに渡りウエディングビジネスに関わる中で培われた日本独自のホスピタリティをユニバーサルな視点から再構築、理論化し広くサービス業に広めてきた。
単なるマナーではなくビジネスに貢献できるコミュニケーションスキルとしてのホスピタリティ教育は産学両分野からの定評がある。著書に『共感力の鍛え方』『ハネムーンでしかできない10のこと』『世界・ブライダルの基本』(監修)など。