レギュラー番組終了の向こう側に見ていたもの

 2002年のレギュラー番組終了と「一生どうでしょう宣言」とは何だったのか。大泉洋さんが大物になってスケジュールやギャラが合わなくなったのではないかという臆測も飛んだが……。

僕が単純にほかのことがやりたくなったんです。ドラマも作ってみたいし、欲が出たんでしょうね。

 もうひとつの理由は、このまま続けて変な息切れが出るのが嫌だなと思ったんです。ロケは毎回全力なので、妥協しないで頑張らなきゃいけないなという雰囲気が出るのが嫌だなって。『水曜どうでしょう』は一生続けるつもりだから、一生続けられるペースでやろうと。大泉くんと鈴井さんは継続を望んでいたんですが、了承してもらいました」(藤村さん)

 しかし『水曜どうでしょう』人気が本当に爆発するのはレギュラー番組が終了した後だった。藤村さん、嬉野さん自らがこれまでの映像を再編集し、2003年より半年に1本のペースで発売される『水曜どうでしょうDVD』は売れ、また各都道府県のローカル局での放送がファンの心を捉え、まさに日本列島を完全制覇していく。

 その後、ヨーロッパ完全制覇の旅シリーズ続編、マレーシアジャングル・リベンジ、アフリカの旅、北海道の山中にツリーハウスを建てる(後に水曜どうでしょうハウスとして一般公開)などの新作公開にファンが歓喜し、次の作品をまだかまだかと待ち望む展開が20年続いているのだ。

'18年に新社屋に移ったHTB。大泉いわく「建てたの、オレだよ!」という爆弾発言も 撮影/渡邉智裕
'18年に新社屋に移ったHTB。大泉いわく「建てたの、オレだよ!」という爆弾発言も 撮影/渡邉智裕
【写真】『水曜どうでしょう』ファンにとっての聖地

『水曜どうでしょう』のファン層は老若男女。親子2代、3代で見ている家族ファン、DVD・グッズをすべてそろえてイベント参加やロケ地巡りに熱心なファンも多く、女性ファンの心理は「教室の後ろのほうでキャアキャアと面白そうに遊んでいる男子を見ている女子の気持ち」といわれる。この“水曜どうでしょう現象”をどう感じていたのだろうか。

「そりゃあ全国の人も見るだろうという思いはありました。そもそも北海道の人に向けて作っていないわけだから。もちろんうれしいですよ。セオリーを全部外して、自分たちが面白いと思うものだけを作って、熱狂的に受け入れてくれる人がいるというのはね。自分の感覚が間違ってないなというのと、センスのある視聴者っているんだなって感じましたね」(藤村さん)

「それからDVDが売れて、今まで見たことがないお金が入ってきてね。さすがにこれだけ会社に貢献すれば、自分たち好きなことができるだろうとね。26年現金を入れ続けているわけですからね(笑)」(嬉野さん)

 嬉野さんが趣味的に撮影していた写真を集めた『水曜どうでしょう写真集』や、2人の対談本の出版、トラックで『水曜どうでしょうキャラバン』を行って全国行脚したり、『水曜どうでしょう祭』と題したフェスを開催するなど、さまざまな活動を行ってきた2人。

 2019年には監督としてNetflixとHTBで放送されたHTB開局50周年記念ドラマ『チャンネルはそのまま!』(主演・芳根京子さん、総監督・本広克行さん)の制作を行い、藤村さん自身も出演。ドラマ後半には大泉洋さんがキーパーソン役を好演している。

「大泉さんの演技はさすがでしたね。始発便で来て、いきなり重要なシーンの撮影から入ったのに、見事に演じてくれて。さすが名優ですよ」(嬉野さん)