ではなぜ、彼がそういう存在になれたかといえば「キモさ」「賢さ」を併せ持っているからだ。「キモさ」はある種の芸人にとって必要な要素だが、それを自在にコントロールできる「賢さ」がないと成功はしない。初期のタモリにせよ、江頭2:50にせよ、アンガールズの田中卓志にせよ、である。

アンガールズ・田中卓志も注視していた

 その中のひとり、田中がクロちゃんについて予言めいた発言をしていた。2015年の正月番組『有吉VSミジメちゃん今年幸せになってほしい人大賞』(フジテレビ系)の中で、自分のポジションを脅かしそうな芸人を聞かれ、

「今、クロちゃんが怖いんですよ。恐ろしい。(略)いちばん気持ち悪いでしょ」

 と、回答。「もう牙城全部崩されるというか。(略)オレも気持ち悪いけど、心底気持ち悪いというとクロちゃんなんですよ」と、脅威を語っていたのだ。

 その2年後、クロちゃんは『水曜日のダウンタウン』で虚言癖がバレ、クズキャラとして浮上。また、別の医療番組で注意された食生活の改善についても、守っているフリをしていたことが明るみになった。

 さらに、ショックを受けたとして泣いた女医に対し「泣きマネする女もいるから」と、クズ発言。想像の上を行くリアクションでブレイクを果たした。

 それ以降『水曜日のダウンタウン』では彼にアイドルグループ『豆柴の大群』をプロデュースさせたり、彼を軸に恋愛リアリティーショーのパロディーをやらせたりと、フル活用。彼のほうも、その流れに喜んで乗っかっていった印象がある。安田大サーカスがHIROの病気などでグループ活動をしにくくなっており、渡りに船だったのだろう。

 最近では「エンタメ界のヒール役だと思う著名人ランキング」で2連覇を達成。2位以下にホリエモンやガーシーといった顔ぶれがいることから、

「ボクが入ってなかったら、ほんとうに悪い人たちばかりだよ、このランキング」

 と、苦笑してみせた。確かに、彼は世の中を巻き込むような騒動とは無縁なのだ。

 ただ、こんなクロちゃんをエンタメにできるのは『水曜日のダウンタウン』だけ。もし、この番組がなくなってもうまく立ち回れるのか、気になるところだ。ここはぜひ『水曜日のダウンタウン』が終了します、というドッキリを仕掛けてみてほしい。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。