伊勢谷はサロンメンバーに次のように呼びかける。

《自分が関わりなくて、特別詳しくなければ投票しなくてもいい。わかっている人が、少ない投票率かもしれないけど、そのなかで効果を出せる。効果を出せるというか、新しい選択肢を取っていける》

《全員が投票するなんてことは全然しなくていい》

 “自分が関わりがないことであれば投票しなくていい”であれば、伊勢谷が話すように“少ない投票率”となってしまう。それは果たして良いことなのか。“効果を出せる”のか……。

 逮捕前からこのようなアイデアを持っていたという伊勢谷。この考えが浮かんだのは、自身が代表を務める会社で進めていた『REBIRTH PROJECT』で、オランダのアムステルダム、アメリカのポートランドを視察。画期的な市民投票で“社会”が作られる地域を目の当たりにしたから。《政治家がいない仕組みを作ることができれば、殺される必要も、殺す必要もない》という。

 政治家が“殺される”“殺す”は、先日国葬が行われた安倍晋三元首相を指していると思われる……。 

“安楽死”が認められないことへの不満

 ときには酒を飲みながらの配信もある。すると一層饒舌に話す。

「ブランド物が憧れの対象だったり、逆に安物が大量生産されているといった資本主義社会における“物質主義”への不満、“安楽死”が認められないことへの不満、外国人と違いお酒の席で政治の話をしない日本人について、現在の貨幣システムなどなど……。安楽死までいくとちょっとついていけないな……なんて思ったりするのですが(苦笑)」(前出・伊勢谷のファン)

 伊勢谷の理想は、ヒッピー文化におけるコミューン(小規模な生活共同体。場合によっては財産を共有することもある)のようなものか。大量生産の最たるものと言える『ユニクロ』や『100円ショップ』については「あんなものなくなるべき」と強い口調で否定している。かつて伊勢谷はそのユニクロのCMに出演していたのだが……。

 思想をサロンで発信し、自身が考える素晴らしい“町”を作る。似たようなことを続けている者がいる。『キングコング』の西野亮廣だ。彼は“信者”とも揶揄されるファンと共に『町づくり』を進めている。その町は紛うことなき“西野ワールド”になるだろう。前出とは別の伊勢谷のファンがその対比について次のように話す。

「伊勢谷さんは西野さんのように共感したファンを集めて……とは考えていないようです。“自分たちで考え、社会を作っていく”という思想のもと、それぞれがそれぞれの町でやってほしい、“俺ワールド”にしてはいけないと思っていると話しています」