【便秘薬】のみ続けるとキケンなタイプあり

 便秘解消のためにに頼りすぎるのも要注意だ。便秘には大きく「刺激性」と「浸透圧性」の2種類がある。

便秘薬の使いすぎで腸にダメージが

 刺激性便秘は、大腸に到達すると腸の大蠕動を起こして排便を促すのだが、刺激性便秘の使いすぎに警鐘を鳴らすのが、便秘外来担当の水上先生だ。このを長年使い続けた90代男性の話を紹介してもらった。

 男性は50代から排便回数が減って刺激性便秘を使用し続けた。やがてをのまないと排便がない事態に陥り、精神的にも不安定になった80代で受診。「下剤を持参され、思いつめた様子でした」と、当時の患者の様子を水上先生は振り返る。

 検査でほかの病気がないことを確認したあと、便秘を週2~3回までに制限したという。

「刺激性便秘を使い続けると、腸管の神経が集まる場所や腸壁がダメージを受けて腸がのびて薄くなります。こうなると大腸が疲れきって便を肛門までスムーズに送り出す力がなくなります。『下剤性腸症』という状態です」(水上先生、以下同)

 下剤性腸症になってしまったら刺激性便秘を急にやめるのは厳禁だという。

「いきなり刺激性便秘を中止すると本当に便が出なくなってしまうので要注意です。実際、腸の形が悪い人で自力で排便できなくなり、手術が必要になったケースもあります」

 幸い、この男性は徐々に自力で排便ができ、3年後には便秘なしでもほぼ毎日排便できるようになった。

「本人も楽しい日々を取り戻せたと喜ばれましたし、ご家族もほっとされました」

 日本の研究では、便秘を週2回以上内服すると、大腸がんのリスクが3倍近くになるという報告もある。欧米では刺激性便秘の使用が厳しく規制され、街中の局で容易に入手することができなくなったため、刺激性便秘による下剤性腸症がなくなったという。

「日本ではいまだに誰でも簡単に入手できるのは問題だと思います」

 刺激性便秘をやめるには、まず「便秘」の概念を変えることからだという。

排便回数は少なくても問題ない(画像はイメージです)
排便回数は少なくても問題ない(画像はイメージです)

実は、排便回数は週2〜3回で十分なのです。で便を毎日出すのは翌日に出す分まで無理やり出していることと同じです。本来出すべきなのは最初に出てくる塊の便だけ、緩い便や泥状の便は明日あさっての分です」

 便秘の使用を週2回までとすれば、時間はかかるがほとんどの人が刺激性便秘から離脱できるという。

市販の便秘薬も使い方しだい

 市販の便秘はどう使うべきなのか。

「刺激性便秘も必要なときには大事なです。旅行や生理前など、排便がなくておなかが張って苦しいときには使ってください。ただし週2回まで。長引く慢性便秘の治療には向きません」

 浸透圧性の便秘は、腸管内の浸透圧を高め、水分量を増やすことで便をやわらかくして排便を促すもの。

「こちらは適量なら毎日のんでも大丈夫ですが、高齢者や腎機能の悪い人は高マグネシウム血症という致命的な副作用を起こす場合があります。1日の内服量が1gを超える場合は医療機関に相談してください」

☆使用は週2回が限度、刺激性便秘の主な市販
・コーラック ・スルーラック ・ビオフェルミン便秘 など

☆適量なら毎日でもOK!浸透圧性便秘の主な市販
・コーラックMg ・酸化マグネシウムE便秘 など

教えてくれたのは

水上健先生
久里浜医療センター内視鏡部長・消化器病専門医。