スピーキングテストのせいで志望校も変えざるを得ない?

「主要5教科の調査書点(5段階)は、日々の授業での学習活動の成果で、それが各教科23点満点で換算されます。しかし『ESAT-J』はわずか15分、一発勝負のテスト結果で20点満点。100点満点の『ESAT-J』のスコアを20点満点に圧縮し、Aならば20点、Bは16点、Cは12点……と4点刻みで成績に加点します。

 倍率が高い難関校の合否ラインには同点の受験生が多数存在するため、この4点刻みの得点の影響はあまりにも大きい」と、神奈川大学教授の久保野さんは指摘する。

難関高の合否に大きく関わる可能性があると危惧されている(写真はイメージです)
難関高の合否に大きく関わる可能性があると危惧されている(写真はイメージです)
【写真】大学受験では非難轟々、都立高に導入の「スピーキングテスト」はどう使われる?

 保護者会のメンバーからは、

「『ESAT-J』のスコアは、志望校を決める12月には間に合わず、受験直前の1月中旬に生徒に渡されるため、その結果によっては短期間で志望校を変えざるをえない事態にもなり、進路指導も混乱するのではないかと心配」

「『ESAT-J』はタブレットに向かって回答する特殊な形式の試験なので、やはり慣れの問題が大きい。酷似していると指摘されるベネッセの英語試験『GTEC』をすでに取り入れている自治体や、塾で対策講座を受けている生徒は有利になり、格差を助長することになるのでは?

 などの意見も寄せられる。かつて情報漏洩問題を起こしたベネッセに不信感を持つ保護者も多く、受験登録時にはベネッセのサイトに個人情報を入力することに躊躇する例も多かったそうだ。

不受験者には仮想点を加算。逆転現象も!

 専門家が看過できないと指摘するのは「不受験者」についての問題だ。

 都立高校は、公立中学校以外に在籍する生徒や都外から引っ越してくる生徒も受験するが、こういった生徒たちは基本的に『ESAT-J』の対象外。

 さらに感染症などのやむをえない事情によって受験できない生徒も不受験者となるが、不受験者には筆記試験で同等の成績を持つ生徒の『ESAT-J』の平均点(仮想点)を加算するという「救済措置」がとられるのだ。

「仮想点は、自分と同点の他者のスコアに左右されます。他者の成績が自分の得点に反映されるようなシステムを入試に導入してはいけません。また、その点数次第で合否が逆転する可能性があります。

“スピーキングのスコアと学力試験結果の間に相関があるというデータはない”と都教育委員会は答弁しました。仮想点を算出する根拠が明確でないのに、こうした措置をとることは制度的に破綻しています」(久保野さん)