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ー 「幼児には飛び越えるのは無理です」

 千葉県美浜区、JR京葉線の海浜幕張駅から約800メートル南東のマンションが立ち並ぶエリア。すぐ近くには消防署や病院があり、住みやすい環境が整っている。その一角にある48階建てのタワーマンションで、11月2日午後2時15分頃、2歳の男児が25階から転落し、死亡するという痛ましい事故が起こった。

 同じマンションに住む住人は事故発生当時の状況をこう話す。

「救急隊員がエントランス部分の屋根に梯子をかけて、登っていました。高層階に住んでいる知り合いに聞いたら、大きな物音がして、下を見たら子どもの姿が見えたと言っていました。すぐに警察やマスコミが集まってきて、ヘリコプターも飛んでいたので、騒然としていました」

 高層階まで聞こえるほどの物音なのだから、相当大きく響いたのだろう。

 昨年4月から入居が始まったばかりだというタワマン。ファミリー層が多く、アメリカンスクールに通う子どももおり、価格帯は4000万円台から物件によっては1億円以上となる。こうした高級マンションで、なぜこのような事故が起こったのか。

「幼児には飛び越えるのは無理です」

 このマンションのバルコニーについて、5歳の子どもがいる住人はこう話す。

「子どもが簡単に落ちるようなバルコニーではない。柵の高さは1・2メートルほど。幼児には飛び越えるのは無理です」

 建築基準法では、2階以上のバルコニーやベランダには1・1メートル以上の柵や手すりを設置する決まりになっている。建物としては、基準を満たしているが、一方でこう証言する住人もいた。

「バルコニーはとても広いです。荷物を置いている人も結構いますね」

 男児はどのような状況で転落したのか。

「転落した当時、両親は外出中で男児が1人で自宅にいたそうです。柵は2歳の子どもが簡単に飛び越えられる高さではないですが、ベランダにはキャンプ用の椅子が置かれていたようです」(全国紙記者)

 ベランダに置かれていた椅子を足場にして柵に登り、誤って転落した可能性が高いとみられている。

 一夜明け、事故翌日の昼頃。現場では清掃作業が始まった。作業員の1人が男児の転落したマンションの玄関の屋根に上り、清掃と床の張り替え作業が行われ、その様子を住民も不安そうに見ていた。

 所轄の千葉西警察署によると

「11月2日に現場検証を済ませましたが、捜査段階なので、事件か事故か報告できません」

 ということだったが、

「事件の可能性は極めて低い」

 とのこと。2度とこのような事故が起こらないことを祈るばかりである。