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ー 昨今お笑いの傾向とは真逆の「毒舌漫才」でM-1制覇
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ー 毒舌漫才が評価されるなら今しかなかった

 かもめんたる・岩崎う大が注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はウエストランド。

昨今お笑いの傾向とは真逆の「毒舌漫才」でM-1制覇

 昨年末にウエストランドが見事M-1グランプリを制しました。昨今お笑い界を席巻していた人を傷つけないお笑いとは真逆に位置する「毒舌漫才」の極みのようなネタでの優勝がこんなに早いタイミングで起こったことはとても興味深い事象だと思っています。

 しかし、それと同時にウエストランドの毒舌漫才が評価されるなら今しかなかったのではないかと僕は感じております。それは後ほど、述べるとして。

 僕はウエストランドとは10年以上前はよくライブで一緒になっていました。

 当時ウエストランドがどんなネタをやっていたか詳しくは覚えていないのですが、すごくインパクトがあったのが、今と同じで、河本くんのほうがネタ中にほとんど発言しないというそのスタイルでした。

 僕は勝手にいつかは河本くんももっとネタに関わっていくスタイルに変わっていくんだろうと思っていましたが、ウエストランドはそのスタイルを貫いていきました。

 ウエストランドは井口くんのワンマンスタイルといっていいと思うのですが、こういうコンビの場合、その相方である河本くんの佇まいや、キャラが意外と重要になってきます。簡単にいうと「相方必要?」という批評が生まれてしまいがちです。

 ネタ中に、1人が活躍するネタと2人が活躍するネタなら、ネタの面白さで並んだときに後者のほうが高く評価されるものです。

 他者からの評価だけでなく、それはコンビ間でも起こっていくでしょうし、芸人本人がコンビにおける自分の必要性に悩むことになり、最悪の場合解散に至るわけです。しかし、河本くんはその辺が強くできているというか、どっしり構えているように見える不気味なオーラがあります。

 実際、こないだのM-1グランプリでもネタの一部を飛ばしていたという話ですが、河本くんにはそれを感じさせない精神的体幹の強さが見られました。

 やかんも100年使ってると妖怪になるといいますが、河本くんには長年にわたり井口くんの隣にずーっと立ってきた人間の妖気が漂っているように思えました。長い年月をかけて河本くんはすっかり化けていたのです。

 ウエストランドは岡山県津山市の同級生コンビで出会いは中学校だったそうです。そのころから脈々と続く2人の関係性の到達地点が今のウエストランドなのでしょう。