目次
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ー 膨大な写真が遺族を悩ます“負の遺産”に ー スマホに千枚以上の写真がある人は要注意
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ー 親の生前整理は写真から始めるとスムーズ

「いつかやらなきゃ」と思いつつも、手がつけられないのが“写真の整理”だ。大量のアルバムや段ボール箱に詰まった写真……遺された家族も処分に苦慮するという。1万件以上の現場を経験したお掃除・お片づけのプロに、生前整理のポイントと、後悔なく捨てるコツを伺った。

膨大な写真が遺族を悩ます“負の遺産”に

遺品整理の現場で、遺(のこ)された家族がもっとも処分に困るのは、写真です」

 そう語るのは、32年間、お掃除・お片づけのプロとして遺品整理や生前整理に携わってきた大津たまみさん。

「一般的な日本の家庭には、約5000~1万枚もの紙焼き写真が眠っているといわれています。実際、片づけの現場で数十年分の紙焼き写真が出てくる家庭をたくさん見てきました」(大津さん、以下同)

 膨大な写真を目の前にして悩んだ家族の多くは“一気に捨てる”か“放置する”かの選択をしているのが現状だと話す。

「一気に捨てるのは簡単ですが、写真の場合は、正解といえません。家族の大事な思い出を捨ててしまったと悔やむ人も多いです。かといって、何の写真かわからない大量の写真をずっと持っておくのは場所を取りますし、思ったよりストレスを感じるものです」

 では、遺された家族に迷惑をかけず、自分も後悔しないためにはどうすればよいのか。

 大津さんが提案するのは、大切な写真のみを収めた1冊の「マイ・ベストショットアルバム」(以下、ベストアルバム)を作ること。写真が片づくだけでなく、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなるからだ。

大津さんが作った自身のアルバム。「人生はまだ続いているので、大きなライフイベントがあると、後半の写真を入れ替えています」。最終ページには(遺影用の)エターナルフォトも収録
大津さんが作った自身のアルバム。「人生はまだ続いているので、大きなライフイベントがあると、後半の写真を入れ替えています」。最終ページには(遺影用の)エターナルフォトも収録

「作るのは、生まれたときから今までの写真を時系列でまとめた、世界に1つのフォト自分史です。それを見ると“私の人生は、こういう人生だったな”と振り返ることができ、これからの人生に何が必要で何がしたいかを考えられるようになります。つまり、自分自身の人生の“棚卸し”ができるんです」

 また、アルバムを作る過程で、家族との関係を見つめ直せたという人も多いと大津さん。

「きょうだいのなかで自分だけが大切にされなかったと感じて生きてきたという58歳の女性は、写真整理をするなかで、自分がきょうだいとおそろいの服を着た写真や、家の壁に自分の描いた絵が飾られていた写真を見つけたそうです。毒親だと思っていた母親が、やさしい目で自分を見つめていた写真もあり“私も愛されて育ったんだな”と。過去のわだかまりを清算できたと話してくれました」

スマホに千枚以上の写真がある人は要注意

 一方、日々増え続けるデータ写真はどう整理すればよいのか。まずは、スマホ内の写真が整理できているかのチェックをしたい。

「スマホ内の写真が千枚以上の人は、写真の整理がきちんとできていないと考えたほうがよいでしょう」

 フォルダ分けをし、1か月に1回は写真整理の日を決めて、スマホ内で保存する写真の見直しをすること。データは突然壊れて開けなくなってしまうこともあるので、バックアップを取り、本当に大切だと感じる写真はプリントしてベストアルバムの候補にするといい。逆に、紙焼き写真はデータ化して保存するのも手。紙焼き写真を簡単にスキャンできる製品やサービスを利用すれば、データ化のハードルはそれほど高くはない。

「紙焼きでもデータでも、写真整理は大事な写真を“見える化”することが目的。お気に入りの写真が集約されたベストアルバムを作っておけば、そのほかの写真はいつでも処分できるので、どのような形で保管してもいいし、納得したタイミングで処分してもいいと思います。

 いざという時もベストアルバムだけを保管すればよいので、遺された家族を困らせることはありません。人生、どんなことがあるかわかりませんし、写真はどんどん増えるものですから、思い立ったらすぐに整理を始めてほしいです」