過激な発言が重宝される学者コメンテーター界隈

 しかし、この件については2年前の発言であるにも関わらず日本ではそこまでの炎上騒ぎになっていないという点にも注目したい。キー局で情報番組の制作に携わるプロデューサーが語るのは、“過激な発言をする学者コメンテーター”を好んで出演させたがるという現状だ。

今の時代ののコメンテーターはただ自分の専門分野だけ話せればいいというわけではなく、キャラクターやタレント性も重視されます。スタジオ、またはリモート出演で個人的な意見を求められた際に、やはりキャラが際立つような発言をしてほしいという気持ちは起用する側にはあります。個人攻撃や政権批判などをしないといった一定のラインを守ってくれれば、あとはどちらかといえば“強めの主張”をしてくれたほうが番組は盛り上がる。成田さんや三浦瑠麗さんもそうですが、やはり毛色の違う個性が立った学者コメンテーターは重宝されがちです

 出演者の不適切発言となると、番組を放送している局にクレームが殺到するものだが、今回の成田氏の件に関してAbemaの関係者に話を聞くと、

本社にはきているのかもしれないが、現場にはクレームは下りて来ていませんね。逆に成田さんが出演する番組へのアクセスは増えているみたいです

 ほかにも成田氏が出演する番組を放送しているテレビ局の関係者にも聞いてみたが、クレームは入っていないという。

ネット番組での発言でしたし、ニュースになっているのもネットだけですから。どこもたいして気にしていないようです。彼の出演が取りやめになるところはないと思います。本人も反省しているようですし、これからは不用意に過激な発言はしないと思います」(キー局プロデューサー)

『ニューヨーク・タイムズ』は成田氏が在籍するイェール大学にも質問を送ったが回答は得られなかったようで、代わりに成田氏の指導教官の1人だったヨシュア・アングリスト博士は《才能ある学者》であると認めたうえで、《私が一番心配するのは、彼が他のことに気を取られていることで、それはちょっと残念》だと語っている。

 何を言わんとしているのだろうか。テレビ、ラジオ、ネットメディアに引っ張りだこの成田氏はバラエティー番組にもたびたび出演している。研究よりタレント活動が目立っていることへの警鐘なのではないか。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。