NHKを2月末に退職した武田真一アナ(55)も同じタイプに違いない。武田アナは民放内で争奪戦が繰り広げられた末、4月から日本テレビ系の新生情報番組『DayDay.』(平日午前8時)のMCを務める。  

 武田アナはNHK時代の2019年4月から丸3年間に渡ってMCを務めた『クローズアップ現代+』で、ゲストらの話の聞き役に終始した。感情すらほとんど表に出さなかった。

 災害などの悲劇を報道する時、目を真っ赤にすることもあったが、こみ上げる悲しみすら表に出さないよう努めていた。これは石井、羽鳥アナとも共通する。どこまでも自分は二の次。消極的というわけではなく、タレントではなくアナなのだというプライドからだろう。

 控え目なアナたちが人気なのである。なぜ、アナのトレンドに変化が生じたのか。その理由の1つはMCや司会を務めるお笑い芸人が増えたので、逆にアナには正統派が求められているのではないか。また、説教臭いアナには視聴者側が拒絶反応を起こしているに違いない。

石井アナのコメントから見る真面目な人間性

 4月からゴールデンタイムにも登場し、知名度がさらに上がりそうな石井アナ。その素顔は愉快な人で冗談も言う。情熱的でもある。2004年に結婚した夫人は、旅番組のロケで訪ねた三重県内の喫茶店のお嬢さんで、ひと目惚れした石井アナから声を掛けた。名古屋からその喫茶店までは片道80キロあったが、出会った後は週1回のペースで1年間に渡って車で通った。

 夫婦仲の良さは知れ渡っているものの、それを石井アナにあらためて問うと、少し考え込み、「仲が良いはずです」と答えた。わざわざ「はず」を付けた。夫人に確認せずに断言するのが嫌なのだ。真面目な人でもある。

 アナは全国の人に顔を見せる仕事。疲れた表情ではカメラの前に立てない。石井アナには誰でもマネできそうなセルフコントロール術がある。石井アナは忙しいにも関わらず、いつも上機嫌だが、これにはコツがあった。

「寝るときは『今日もホンマに素晴らしい1日やったなぁ』と思います。すると、気分が違って来るんですよ。朝起きたときも『しんどいな』と思うんじゃなくて、『今日もまた始まるぞ!』って思う。すると前向きになれます」(石井アナ)

 自分は二の次の石井アナが『世界ふしぎ発見!』では、どんな司会ぶりを見せるのか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。