目次
Page 1
ー アルバイト3つ掛け持ち、リアルな収支が大反響
Page 2
ー “ぼっち”の老後を視聴者が“見守り”
Page 3
ー 初孫の誕生が転機に
Page 4
ー 共感と応援。温かみあふれるコメント欄

 一部のユーチューバーが広告収入の減少を告白したことをきっかけに、度々オワコン化の報道が見受けられるYouTube。だがYouTubeショートは開始1年で絶大な人気を集めており、10〜20代にとって動画といえば、もはやテレビではなくYouTube。

 そんな中、シニア層のユーチューバーによる投稿がじわじわと増えている。内容は、若者や芸能人が発信するような「〇〇してみた」といった企画ものではない。カメラを通して日々の生活を記録に残すブログのようなもので、女性の投稿者が目立つ。

 彼女たちは例えば「60代シニア」といった肩書のもと、少ない収入をどうやりくりするかなど、自身の等身大の暮らしを発信。一見、後ろ向きに思える内容だが、中には再生数が100万回を超える動画もあり、コメント欄もにぎわっている。

 なぜ、著名人でもない一般人の日常を切り取った動画が再生数を稼いでいるのか。実際に年金受給額について語る動画を投稿する、60代のシニアユーチューバーに話を聞いてみた。

アルバイト3つ掛け持ち、リアルな収支が大反響

 その名のとおり、波乱万丈な人生を送ってきた60代後半の女性(以下、波乱万丈さん)が投稿するチャンネルが60代未亡人の波乱万丈人生』。

 2021年8月の投稿開始以来、動画の総再生回数は1204万回を超えている。現時点での登録者数は、3万4700人(2023年3月現在)。特に人気のある動画は、「貯金額公開」「通帳公開」「収入公開」などのお金の話だ。プロフィールには、「貯金0、年金月2万円で暮らしている」と書かれている。

「“60代で未亡人”そんな人の貯金額はどのくらいあるのだろうと思われている方も多いかと思ったんです。私自身も、みなさんの貯金額には興味がありますし。ただ、そういったお金の話を面と向かってする機会なんてなかなかないですよね。だからこそ、動画にしてみようという思いがありました。それに、貯金0の私でも、なんとか毎日がんばって生きているよというのを発信して、皆さんにも生きる勇気を持ってもらえたらとも……」

 さっそく、約96万回再生されている動画「収入公開 年金予定額が少なくバイト3つの日々」(2021年10月配信)を見てみると──。

 電卓を前にした波乱万丈さんの後ろ姿が画面に現れ、「私は30年前に夫を亡くし、今は子ども達も大きくなり、一人暮らしです」というテロップが流れ始めた。いわく、「貯金はなく、65歳になって支給される年金の予定額も月わずか2万円なので、とにかく働いて日々の生活費を稼がないと生きていけない状況。そのため、アルバイトを3つ掛け持ち中」だという。以下は、動画の中で公開されている、実際にその月に支払われた給与である。

 1つ目のアルバイトは、スーパーでのレジ打ちと品出し。週5日、午前10時〜午後2時の勤務で、月5万〜7万円程度

 2つ目は、倉庫での雑用作業。週4日、夕方17時〜夜21時の勤務で、月5万〜6万円

 3つ目は、知り合いの店での雑用。人手が足りないときだけの、完全不定期の出勤。

 合わせて、年金保険料などを除いたこの月の収入は、計11万1547円

 いくら地方在住とはいえ、これでは、大人1人が生きていくのに余裕があるとはいえない稼ぎだが、波乱万丈さんは、節約に余念がない。