共感と応援。温かみあふれるコメント欄

 彼女の動画には、本人は一応登場するものの、たいてい後ろ姿や手元、足元だけで、顔出しはしていない。ゆったりとしたバックミュージックに、文字テロップが流れるだけなので、本人の声も入っていない。

 それでも、その佇まいや文章から伝わってくる彼女の人柄に惹かれ、またその境遇に共感し、応援するファンは少なくない。事実、波乱万丈さんのチャンネルのコメント欄は、いつも人の温かみに満ちている。

 例えば、今年の2月に投稿された「年金2万円の晩ごはんを公開します」。

 動画の内容は、倉庫でのアルバイトを終えた波乱万丈さんが、職場から帰宅し、こたつで夕食をとるまでの、なんでもない日常風景だ。この日の晩ごはんのメニューは、サバのトマト煮込みとツナサラダ。しめて300円弱という質素な食事だが、これに焼酎のお湯割りで晩酌するのが、波乱万丈さんの何よりの楽しみなのだ。昨年から加わった同居人、保護猫りんちゃんの存在も、癒やしとなっている。

 そんな動画のコメント欄は──。

《お仕事お疲れさまです。主さんと同じ年齢、同じ未亡人で私も低年金です。もちろん、パート、アルバイトをしています。いつもユーチューブ見て、励まされています、お互い頑張りましょうね》

《私も60代半ばになりました。食事を作るのが少しづつ億劫になっています。量も減り、私自身は揚げ物などあまり食べなくなりました。主人や娘がいるので作りますが手の込んだものは作れなくなりました。どうかお体ご自愛ください。動画楽しみにしています》

《71才の夫婦2人暮しの年金生活者です。お勧めのサバ缶レシピを紹介しますね。(略)お酒のおつまみにもご飯にも良く合うので試して頂いたら嬉しいです》

 などなど。

 若い世代が中心のように思われがちなYouTubeだが、シニア世代の視聴も多い。もしかすると、彼らのほうが、デジタルネイティブといわれる10代、20代よりも、ふだんの生活で孤独を感じ、人とのつながりを求めているのかもしれない。

 波乱万丈さんの動画チャンネルは、そんな彼ら彼女らのプラットフォームでもある。