万人受けは狙わず一点突破を貫く

 SNSやメディアでも話題となり、同社には別バージョン開発の要望も届いている。

「関西弁や東北弁などの方言バージョンが欲しいという声はかなり多いですね。あとは、好きな声優さんの声で発売してほしいといったご要望もたくさん届いています。いただいたご意見を生かしながら、新作や関連商品などをちょうど開発しているところなので、ぜひご期待ください」

 防犯や迷惑電話の撃退のためのグッズではあるものの、実際に使うとどこか楽しい雰囲気になるのも、ライソン社の商品の魅力かもしれない。同社は『応答くん』のほかにも、ユニークなアイデア家電やアウトドアグッズを企画・販売している。

『ペヤングやきそば』(まるか食品)を焼くためだけに最適化されたホットプレート『焼きペヤングメーカー』や、わずか58秒でトーストを1枚だけ焼ける『秒速トースター』など、どれもが“謎の個性”を放つ。

「製品を開発するうえで、他社さんにはなかなかまねができない『一点突破』という理念を大切にしています。弊社は工場を持っていないファブレス企業で、社員の平均年齢は33歳くらい。大阪発の小さな会社ではありますが、そのぶん風通しもよく、遊び心のある発明家たちが集まったユニークな会社ですね」

 近年のヒット商品は、コロナ禍での宅飲み需要を反映した『せんべろメーカー』。おでん鍋、焼き鳥網、炙り網、熱燗鍋、とっくり、おちょこがセットになった、まさに“ひとり居酒屋調理家電”だ。

おでん鍋、焼き鳥網などがセットになった『せんべろメーカー』。5980円(税込み)。
おでん鍋、焼き鳥網などがセットになった『せんべろメーカー』。5980円(税込み)。
【写真】ライソン株式会社が作ったユニークすぎる“一点突破”商品

「電熱ヒーターで火を使わずに、お酒を温めたり食品を炙ったりでき、手軽に居酒屋メニューが楽しめます。大きめサイズの『にせんべろメーカー』も発売しており、それぞれ販売数3万台を超える大ヒット商品となりました」

 広報の三上さんが「ライソンらしさが詰まった製品」だと紹介してくれたのが『7DAYSサンドメーカー』。

 7種類のプレートを付け替えることで、ホットサンド(2種)、ワッフル、パンケーキ、ドーナツ、ベビーカステラ、焼きおにぎりがこの1台で簡単に作れるという。

ホットサンド、焼きおにぎりなど7種の料理が1台で作れる『7DAYSサンドメーカー』。7000円(税込み)
ホットサンド、焼きおにぎりなど7種の料理が1台で作れる『7DAYSサンドメーカー』。7000円(税込み)

「1週間、毎日違う朝食メニューになるように、7種類のプレートを付属したというのも遊び心が詰まってるなと思います。個人的には、焼きおにぎりのプレートがツボなのですが……。

 普通サイズのおにぎり2つの型ではプレートの端が空いてしまうので“せっかくだから、空きスペースにちっちゃい焼きおにぎり型もつけちゃおう”となり、ひと口サイズのミニ焼きおにぎりもできるようになりました。これが小さいお子さんなどには好評みたいですね」

 万人受けの家電とは真逆の発想で開発される「一点突破」のライソン製品。『応答くん』も暗い世の中を明るくしてくれる一縷の光……かも?

(取材・文/吉信 武)