そのライフワークともいえる番組を卒業して1年がたち、新たなことに挑戦した。
今年はたけし軍団結成40周年にあたり、この3月に、記念プロジェクトとして『ウスバカゲロウな男たち』を上演した。ラッシャーにとっては芸歴40年目にして初舞台で、台本には“客席を意識!”など赤字をずらりと書き込み、本番に臨んだ。

「寝る間も惜しんで必死でセリフを覚えました。まったく初めての経験だったので、手応えといえるような余裕もなくて。今は終わってちょっとほっとしています(笑)」

師匠からの“巣立ち”を意識した舞台

 たけし軍団だけにドタバタな喜劇作品かと思いきや、『ウスバカゲロウな男たち』は意外にも人情会話劇。

 あるとき中堅企業の社長が亡くなり、創業時から会社を支えてきた役員の中から次期社長を選ぶと発表される。すると役員の男たちが次々“われこそは!”と名乗りを上げ─。

「僕の役はおとぼけキャラの役員で、素の自分に近い感じ。みんなの役もそうで、そこは脚本家の方が考慮して書いてくれたみたいです」とラッシャーが言うように、舞台の設定は現実と大きくリンクする。

 劇中でも最終的にはつまみ枝豆が次期社長になった。

 ビートたけしの弟子たちにより、1983年に結成されたたけし軍団。当初軍団メンバーはビートたけしが設立した『オフィス北野』に所属していたが、2018年に師匠が事務所を退社。後任としてつまみ枝豆が新社長に、ダンカンが専務取締役に就任し、軍団の主要メンバーは『オフィス北野』改め新社名『TAP』の所属となった。

 本公演はたけし軍団にとって初の舞台公演で、恩師への感謝の念と巣立ちを物語に重ね合わせる。ラッシャーが改めて師への思いを口にする。

3月中旬に公演した軍団40周年記念の舞台『ウスバカゲロウな男たち』。ラッシャー板前にとって舞台はまったく初めての経験だった
3月中旬に公演した軍団40周年記念の舞台『ウスバカゲロウな男たち』。ラッシャー板前にとって舞台はまったく初めての経験だった
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「僕らももういい歳ですから、いいかげん、師匠に頼るのもおかしな話ですよね。最近は師匠とお会いする機会もほとんどなくなりましたけど、師匠には本当にたくさんのことを教えていただきました。これからはみんなで頑張っていきます、という気持ちです」

 たけし軍団は一軍・二軍・三軍・その他メンバーで構成され、最大時は50人以上が在籍していた一大組織だ。当時一軍メンバーは、ガダルカナル・タカ、つまみ枝豆、ダンカン、グレート義太夫、井手らっきょ、松尾伴内、柳ユーレイ(柳憂怜)、そのまんま東(東国原英夫)、大森うたえもん、ラッシャーの計10名。

 彼ら一軍は軍団の中でも師匠に最も近いメジャーチームであり、メンバー入りはもちろん、40年にわたりメジャーであり続けるのは並大抵のことではないだろう。ラッシャーも入団時は一軍に入れず、先輩芸人のすがぬま伸のケガを機に代打として加入している。