ちなみに『-教場0-』は倒叙ミステリーに属する。物語の序盤で犯人と犯行手口が視聴者に明かされるスタイルだ。過去の代表作は『刑事コロンボ』(1968年)とフジ『古畑任三郎』(1994年)である。構成が難しいから作品数は少ないが、名作が目立つ。

福山の『ラストマン』はハマり役?

 一方、『ラストマン-全盲の捜査官-』も新しい刑事・警察作品。主演の福山が、全盲のFBI(米国連邦捜査局)特別捜査官・皆実広見役で、警察庁の護道心太朗役の大泉洋(50)の力を借り、事件を解決するからだ。こちらはアメリカ型である。

 アメリカの刑事・警察作品において、「共生」は大きなテーマ。障がい者と健常者がイコールパートナーになり、お互いの能力や個性を生かし、事件を解決する。

 アメリカの場合、人気小説『リンカーン・ライムシリーズ』を原作とするドラマ、映画が大ヒットした。主人公の元ニューヨーク市警の天才科学捜査官は捜査中の事故で四肢マヒとなったが、現役捜査官と協力し合い、難事件を次々と解決する。

 また、聴覚障がい者の女性捜査官がFBIの捜査チームの中で活躍するドラマ『F.B.EYE!!相棒犬リーと女性捜査官スーの感動!事件簿』も大ヒットした。こちらは実話に基づく物語だつた。

 福山は同じ日曜劇場の『集団左遷!!』(TBS系・2019年)では等身大の銀行マンを演じた。今度はどんな難事件でも解決するスーパー捜査官に扮する。フジテレビ系『ガリレオ』(2007年)の湯川学教授もそうだったが、福山には普通の人よりスーパーマンが似合うから、ハマるのではないか。

 誤解されている向きもあるが、何でも出来る俳優のほうが偉いわけではない。故・高倉健さん(享年83)や故・渥美清さん(享年68)は役の幅の狭い人だったが、誰もが認める名優だった。あるベテラン俳優は「1つのキャラクターで長くやれる人こそ凄い」と言った。

 さまざまな役を演じられる俳優は劇団出身者が多い。少人数で次々と公演するので、いろいろな役をこなさなくてはならないからだ。堺雅人(49)らである。

 今回は福山がどんなスーパーマンぶりを見せるのか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。