『SLAM DUNK』がヒットした流れ

 アニメと実写、原作者が脚本を担当と事情は異なるが劇場版の『SLAM DUNK』は昨年から今現在に続く大ヒットとなっている。

「『THE FIRST SLAM DUNK』という映画は動員の初動は昔からのファンが支えた。それがすごく完成度が高くて、すごく出来が良かったから、その評判を聞きつけて新しい人がどんどん入ってきた。『SLAM DUNK』も昔の漫画ですが、今は10代・20代のファンがすごく増えている。

 先日開催されたSUPER COMIC CITYというコミケのようなイベントでは『SLAM DUNK』はすごい数のサークルが参加していたようです。つまり昔からのファンをベースにして、新しいファンを上乗せすることに成功しているコンテンツもある。

『聖闘士星矢』もそういうふうにやりたかったと思うんですが、出来なかった。『聖闘士星矢』の人気だったら、今回もっと良い数字となっていいはずでしたが……」

 SNSの声を見ると、劇場版の『SLAM DUNK』は、「原作もアニメも見たことなかったけど面白かった」という人が多数いることがわかる。

「両方同じ会社の製作であり、『SLAM DUNK』も『聖闘士星矢』も原作を知らなくても見られる内容でしたが、ここまで差が出てしまった。それはひとえに、まず昔からのファンの評判を得て、新しいファンを開拓するという流れを作ることができなかったことにあります。

 今回は製作費77億円ですからね。SLAM DUNKで得られた儲けを正直吐き出してしまっているんじゃないかと……」

 本作はハリウッド製作となったが、現地アメリカでは5月12日に公開となる。日本で苦戦した“数字”をアメリカなどの海外で取り返せるか……。

「もちろん海外にも聖闘士星矢ファンは多いです。日本も同じですが、海外の漫画・アニメファンも原作に忠実かどうかはすごくうるさい。もしかしたら日本よりうるさいかもしれない。日本と同様に海外でも苦戦するかと思います」

 また、前出の前田氏も海外市場について次のように話す。

「製作費は6000万ドルを超えるという話ですが、もしそれが本当ならハリウッド映画の場合はその3倍が損益分岐点です。世界興収で200億円とか、この製作陣の布陣ではハードルが高すぎると思います。新田真剣佑は素晴らしいアクションを見せていますが、まだ世界的にはこれからの立ち位置でしょう。数百億円分のお客を呼べる、までは至らないでしょう。

 中国など期待する海外市場がまだ公開前ですから、関係者は望みを捨てていないと思います。もともと日本以外への期待が大きい企画だと思います。ならば日本公開を後にしたらいいのにとも思いますが……」

 小宇宙(=コスモ/聖闘士星矢における体内に存在する宇宙的エネルギー)による大逆転はあるか──。