この思いも寄らぬ大ヒットは「救いの神」でもあった。

 '78年に始まった代表作『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)のレギュラー放送が'02年で終了。時代劇が退潮するなか、新たな代表作が生まれたわけだ。

“影”を吹き飛ばした陽のオーラ

 また、私生活でもこの時期は節目だった。'03年に大地真央離婚。『暴れん坊将軍』で共演していた松本友里さんと'05年に再婚して、'06年には長男が生まれた。

 松本さんは両親も芸能人で、'84年にアイドルデビュー。'88年にはNHKの朝ドラ『純ちゃんの応援歌』で山口智子扮するヒロインの妹を演じた。アイドル時代からファンだったので、大スターとのおめでたい話はうれしかったものだ。

 しかし、彼女は'10年に自ら命を絶ってしまう。松平はこう語った。

「出産後、その一途な性格で子育て、母の介護など、日々完璧にこなそうと取り組んだ結果、しだいに体調を崩すこととなりました」

 この一件により、彼のイメージにも影がさすかと思われたが─。意外とそうでもなかった。『マツケンサンバ』の陽のオーラが、それを吹き飛ばしたかのような印象なのだ。

 こうした明るい音楽にはそういう効果がある。例えば、島倉千代子の『人生いろいろ』がそうだ。病気や事故、借金、周囲の裏切りなど不幸続きだった彼女のイメージをこの曲は見事に反転させた。

 松平もまた、明るいイメージが揺るぎないものとなる。妻の死から5年後に、一般女性と再々婚。'21年の東京五輪では、開閉会式での『マツケンサンバ』待望論まで飛び出した。

 ただ、それも彼がイロモノ感すらある曲を嫌がることなく、大マジメにこなし続けたからである。そういう男だからこそ、神曲が舞い降りたのだろう。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。