ある音楽評論家はこう見解を示す。

「当時は数年前から故・坂本龍一さんのピアノ曲『energy flow』や、『〜the most relaxing〜 feel』といった、穏やかなインストゥルメンタル(楽器のみの楽曲)のコンセプトアルバムがヒットしていました。そういった土壌もあったからこそ、女子十二楽坊の楽曲も受け入れられたのではないでしょうか。もちろん、演奏のクオリティーの高さもあるでしょう」

 事実、『女子十二楽坊〜Beautiful Energy〜』は、インストゥルメンタルのアルバムとしては、史上初のミリオンセラーにもなった。

 2003年の年末には、その年の音楽賞を多数受賞し、NHK紅白歌合戦(第54回)にも出場。翌年1月の武道館での単独コンサートのチケットは、発売後即完売。4月から行われた日本全国ツアー32公演のチケットもたちまち売り切れたという。

 当時について、石さんが解説する。

「日本は女子十二楽坊の最初の海外デビューの地でした。日本での成功は、私たち女子十二楽坊がその後、世界で活動することになる際の、大きな足がかりとなりました。2004年には、受賞こそ逃したものの、米国グラミー賞のワールドミュージック部門のアルバム賞にノミネートもされました。CDの売上枚数は、全世界で1000万枚以上となります」(石さん)

 女子十二楽坊は、たった数年でチャイナドリームを超え、ワールドワイドな存在になったのだ。

計算されていたコンセプトとは

 東洋の魅力を体現したような女子十二楽坊の面々だが、実際、エキスパートぞろいなのだという。

 中国の芸能界に詳しい中国人芸能ジャーナリスト・セブンさんによると、

「女子十二楽坊は、中国では誰もが知っている存在です。日本のモーニング娘。やAKBグループのように、きれいな女性たちが入れ替わっていることも知られています。でもアイドルではなく、実力派のミュージシャンという位置づけです」(セブンさん)

 なお、メンバーの人数は必ずしも12人というわけではなく、初期はサポートメンバーを帯同し、入れ替わっていたことも。

 また、セブンさんが言うように、絶えずメンバーは変化しており、2018年には初期メンバーから全員が入れ替わったそう。

「“十二”という数字は、中国で縁起のよい数字なのです。アーティスト名はそれをふまえ、中国の四大名著の一つである『紅楼夢』に登場する12人の美女と、唐代の王宮にあった『教坊』から発案され命名されました。

 メンバーの人選は、創立当時に決めたコンセプトである『専門性』『人柄』『態度』が基準となっています。音楽の名門の教育機関出身であり、コンクールではトップレベルの実力の持ち主で、かつ華やかさがある人を探し出してスカウトしています」(石さん)

 石さん自身も、子どものころから琵琶の英才教育を受け、名門校である中央音楽学院を卒業。学生時代からプロの演奏家として活動し、各種コンクールでの優勝をさらってきた実力の持ち主だ。

 中国では、その知名度ゆえにとんでもない被害に遭ったことも。

「12人の女性たちに楽器を持たせただけの公演をして、お金を稼いでいた人たちがいました。しかも私たちの楽曲を流して、演奏しているふりをしているだけだったそうです。ひどいことに、そんな詐欺行為が各地でいくつもあったらしいのです。中国は広いですから、全部を指摘して、訴えることができませんでした」(石さん)