若いころに感染し50代以降で発症することも

 一方、閉経の有無にかかわらず、年齢を重ねても引き続き注意が必要なのは「子宮頸がん」だ。好発年齢のピークは30代後半から40代だが、50代以降も30代と変わらない罹患率で推移するため、特定の年齢に限らない悪性の病気と捉えておく必要がある。

子宮体がん・子宮頸がん罹患数2019年(年代別) 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」より
子宮体がん・子宮頸がん罹患数2019年(年代別) 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」より
【写真】子宮体がん・子宮頸がんの罹患数が年代別でわかるグラフ

「子宮頸がんの多くはHPVというウイルスが原因の病気なので、年齢問わずウイルスに感染し、発症する可能性があります。若いころに感染して何の症状もなく過ごしていたとしても、50代、60代で発症するケースもあります」

 出血のほか、水っぽいおりものが増える状態が続いたら、病気のサインかもしれないと疑うこと。

 子宮の両隣にある卵巣のがんも、閉経前後の40代後半から50代に罹患率がもっとも高まる。

「毎月の排卵で卵巣の壁が傷つくことが卵巣がんの主な原因。月経の回数が多いほうがリスクが高くなるので、基本的には月経がある限り、年齢を重ねるごとにリスクは高まります。

 逆に排卵の回数が少ないほどリスクは減るので、妊娠・出産後の無月経期間が長い人のほうが罹患の可能性が低いといえます」

 では病気を見逃さないためにはどうすれば? 清水先生は、やはり定期検診が早期発見の肝だとアドバイスする。

「年に1度、子宮頸がんの検診と超音波(エコー)検査を行うのが基本です。子宮や卵巣の形の変化や大きさの異常をいちばん簡単に確認できるのが超音波検査ですが、自治体によっては子宮頸がんの検診に超音波検査がついていない場合もあります。

 その際はかかりつけ医で超音波検査を追加で受けることをおすすめします。“サイレントキラー”といわれるほど、ほとんど症状が出ない卵巣がんに限っては、発見する手立てが超音波検査くらいしかありません。

 それでも、進行してから発見されることが多い卵巣がんの場合、早期発見には効果がないといわれているので、定期検診を受けているから大丈夫とはいえません」

※画像はイメージです
※画像はイメージです

 不正出血などの気になる症状が起きた場合は、その都度、婦人科を受診。超音波検査を行い、子宮体がんを疑うことも忘れてはいけない。

「月経が来なくなると、出血がなくなるのはもちろん、おりものが減っていくのが正常です。そうでないときは、何か異常が起きている証拠。

 閉経しても膣や子宮まわりのトラブルや病気がなくなるわけではありませんし、ホルモンの変化などで婦人科系の不調が増えてくる年代。だからこそ、気軽に相談できる婦人科のかかりつけ医を持つことが安心につながります」

経産婦は特に要注意!子宮下垂・子宮脱とは?

 骨盤底筋が弱まって、子宮が正常な位置から下がる子宮下垂。悪化すると子宮脱となり、膣外に子宮が飛び出ることも。

 3人の出産経験がある78歳の女性は、ひどい尿漏れと“膣から何かが飛び出る”違和感を覚えて婦人科を受診し、子宮脱が判明。子宮が下がらないよう膣内に器具(ペッサリー)を挿入する治療を受けた。

「多産や大きな赤ちゃんを産んだ経験がある人などは骨盤底筋が脆弱化しやすいので要注意です。40~50代の約3割が、子宮の位置が下がり傾向だと感じるので、尿漏れなど生活に支障が出る前に骨盤底筋を鍛える体操を始めましょう」

産婦人科医清水なほみ先生●「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」院長。日本産婦人科学会専門医。女性医療ネットワーク発起人。通常の婦人科診療にとどまらず、脳科学や心理学の視点も加えて女性のさまざまな不調と向き合う。
産婦人科医清水なほみ先生●「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」院長。日本産婦人科学会専門医。女性医療ネットワーク発起人。通常の婦人科診療にとどまらず、脳科学や心理学の視点も加えて女性のさまざまな不調と向き合う。
教えてくれたのは……産婦人科医 清水なほみ先生●「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」院長。日本産婦人科学会専門医。女性医療ネットワーク発起人。通常の婦人科診療にとどまらず、脳科学や心理学の視点も加えて女性のさまざまな不調と向き合う。

(取材・文/河端直子)