悪い癖が出そうな時に口にする「言葉」

歌手・辺見マリ(72)撮影/齋藤周造
歌手・辺見マリ(72)撮影/齋藤周造
【写真】デビュー当時19歳の頃の辺見マリが美しすぎた

 大病を経て、何か心境に変化はあったのかと聞くと、こう答える。

「もともとクソまじめだから物事を突き詰めて考えちゃったりするし、わりとマイナス思考なんですよ。例えば私の心臓の病気は手術をしても全快はしないから、だましだましじゃないけど、ずっと病気とともに生きていかなきゃならない。夜寝るとき、このまま息が止まっちゃったらどうしようとか考えると怖くなって、眠れなくなる。だから、もう、こんなこと考えちゃダメ! 余計なことは考えないでおこうと、結構、自分との闘いをしているんです」

 悪い癖が出そうなときは、こう口にするようにしている。

「ま、いっか!」

 勢いをつけて強い口調で言うのがコツだ。すると「良い加減に」力が抜けて楽になるのだという。

 昔は、そんなふうにうまく気持ちをコントロールできなかった。若くして歌手の西郷輝彦さんと結婚して2児を出産。離婚後は両親と子どもたちとの生活を1人で支えてきたが、不安でたまらなかった。そんなとき言葉巧みに近づいてきた拝み屋の女性に洗脳され、13年間で5億円もの大金をだまし取られたのだ。

 失ったお金は戻ってこなかったが、洗脳が解けた後は家族の信頼を取り戻し、孫にも恵まれたマリ。

「今は幸せです」

 そう言い切って、穏やかな笑顔を浮かべる。

「全財産失っている人間ですから(笑)。まあ、気楽っちゃ、気楽なんです。残すものもないから、遺書は書いてもしょうがないけど、とりあえず子どもたちへの感謝の気持ちをノートに書いてみたり、終活的なこともやるようになりました」

 自宅には亡き母が残した大量のスクラップ記事や写真、アルバムなどがあり、いつも見える場所に飾っている。10歳になるえみりの娘が遊びに来ると、華やかなドレスを着て歌う若き日のマリの写真を見て、興味津々で質問をしてくる。

「ばーば、昔はこんなだったの?」

「そうよ。こんなふうに歌ってたのよ」

 マリが答えると、孫は目を輝かせてほめてくれる。

「ばーば、すごーいきれい!」

 今のマリにとって、孫と過ごすひとときは、かけがえのない幸せな時間だ。