広末を守ってきた井上社長

 2001年5月、21歳だったときの広末はジャン・レノ(74)とダブル主演した日仏合作映画『WASABI』の製作発表会見で、突如として号泣した。その後、涙の理由を説明したが、ポエムのような内容で意味不明だった。

《夢をかなえることと、自分を守ってくれる人がいること、そういう人がいるから負けてはいけないなと思ったり。でも、こういうことは勝ち負けではないと思ったり》

 さらに同7月にはタクシー料金の不払いを写真誌が伝えた。広末は東京・西麻布の飲食店で俳優・金子賢(46)と遊興したあと、タクシーに乗り、そこからフジテレビの連続ドラマ『できちゃった結婚』のロケ地である千葉県白浜町に向かった。距離は100キロ以上。その運賃約4万円を支払わなかったと報じられた。また、タクシーを降りたあとはダンスを踊るようなポーズを取り、世間はいよいよ首を傾げた。

 火消しにあたったのはもちろん所属事務所のフラームだ。2002年1月に行われた『WASABI』の公開記念会見では参加を許すマスコミを限定。一連の広末の行動を「奇行」などと報じたマスコミは排除した。

 その上で広末を笑顔で会見場に登場させ、本人は「あれは喜びの涙。あの時は失礼しました」と悪びれずに語ったのだ。参加するマスコミを絞ったため厳しい質問は出なかった。これにより、一連の問題はなかったことになった。

 2005年に広末は夜の街で自分が遊び歩いているなどと報じた記事は虚偽だとして、週刊誌を訴え、勝訴。実質的に裁判を取り仕切ったのは言うまでもなくフラームだ。2008年には元交際相手との接触を不倫と誤解される表現で報じた女性誌を訴え、やはり勝訴した。

 芸能人の記事は揉めても訴訟になることが少ない。記事に間違いや誇張などがあった場合、掲載した側が訂正・謝罪文を載せて終わる場合が多いからだ。

 だが、井上社長は広末のイメージを守ろうと懸命になった。広末に好意的な記事を書くマスコミは優遇し、スキャンダルを書く相手とは戦った。穏やかそうに見える人だが、行動は熱い。