7月11日に配信された「日刊ゲンダイ」によると、松尾氏が業務提携を解消したスマイルカンパニーの創業者・小杉理宇造氏はレコード会社に勤務していた時代、近藤真彦を担当していたことから、ジャニー喜多川、メリー喜多川両氏と関係が深かったそうです。また、小杉氏はジャニーズ事務所が設立した「ジャニーズ・エンタテイメント」の取締役に就任しています。達郎氏は近藤真彦「ハイティーン・ブギ」の作曲、編曲もしていますし、妻である竹内まりやはバックコーラスに参加と、ジャニーズ事務所とはかなり距離が近い関係性と言えるでしょう。こういう環境下では、達郎氏が重要顧客であるジャニー氏やジャニーズ事務所に批判的なことは言いにくいことは、想像に難くありません。また、松尾氏が批判を口にすれば自分の立場が悪くなることも、十分考えられたはず。

山下と松尾氏が争っても性加害そのものは解決しない

 ジャニーズ事務所に近い事務所と業務提携していたのに、悪く言ったからモメるのだ、当然の報いだと言いたいのではありません。達郎氏の妻・竹内まりやのヒット曲に「けんかをやめて」がありますが、松尾氏と達郎氏、個人と個人が争ったのでは、性加害そのものも解決しませんし、松尾氏、達郎氏、双方がソンをして終わりになってしまうのです。実際、松尾氏は業務提携が終了となっていますし、ジャニー氏を立場上批判しにくい達郎氏もあれこれ言われています。正義感のある人が損をする、経済的なつながりを持つ人が叩かれるというふうに潰し合うのであれば、性加害に代表される不正は解決できないと思うのです。

 性加害を本気で解決できる力があるのは、テレビ局やスポンサー企業ではないでしょうか。双方が「性加害を働いていた事務所とはつきあいたくない、クリーンな状態を求める」とはっきりした意思表示をするのなら、ジャニーズ事務所もきっちり対応するはずです。

 SNSでは「敵VS味方」のような対立が大好きですし、暴露ブームもあって、大物のしくじりは拡散されやすい傾向にあります。しかし、コンテンツとして盛り上がっても、解決のための“本丸”になかなか辿り着かないヤバさ、歯がゆさが残るのでした。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」