画期的な商品だからこそ、当初は「苦戦した」と明かす。

「『本当に食べられるの?』といった疑問の声が少なくなかったといいます。また、牛肉100%という“ごちそう感”にこだわったために、ボンカレーは80円という価格で販売したのですが、当時の素うどんの価格相場が50〜60円。『高すぎる』という反応も多かったようです」

 そこで大塚食品は、必死の営業活動を開始。

 販売店を相手に試食会を実施するだけでなく、メインキャラクターとして起用した女優・松山容子さんのホーロー看板を製作し、なんと全国の約9万5000のお店に直談判し、飾っていった。ローラー作戦ならぬ、ホーロー作戦である。

 また、当時人気のあった時代劇『子連れ狼』をパロディー化したCM(故・笑福亭仁鶴さんが大五郎役の男の子に、「3分間待つのだぞ」と言ってボンカレーを渡す)が大ヒット。

 '73年、ボンカレーは年間販売数量1億食を売り上げる“お化け商品”へと駆け上がる。これを機に、各メーカーでもさまざまな市販レトルト食品が開発され、普及していった。

'78年には香辛料やフルーツをぜいたくに使った『ゴールド』が登場
'78年には香辛料やフルーツをぜいたくに使った『ゴールド』が登場
【写真】幼いころを思い出す、懐かしきボンカレーの“ホーロー看板”

湯せんよりもレンジのほうがうまさアップ!?

 今日、多種多様の美味しいレトルト食品を楽しめるのは、ボンカレーがその可能性を諦めなかったことが大きいわけだが、ひとつ気になることがある。

※写真はイメージです
※写真はイメージです

 独自に開発したにもかかわらず、各メーカーでも開発されていく──ということは、「特許の申請はしなかったのか?」。そのことを尋ねると、「あえて特許の申請をしませんでした」と明かす。

「会社として社会課題解決ではないですが、レトルト食品を広めたいという思いがありました。各メーカーがさまざまなレトルト食品を開発すれば、世の中のためになるだろうと。

 切磋琢磨する中で私たちも負けないように、さらに美味しいレトルト食品を提案できればと思っています」

 大塚食品は、3つのことを心がけて商品開発に取り組むそうだ。革新的な商品であること、健康的な商品であること、社会貢献を果たすような食品であること。

「過去にはお湯が不要で待ち時間がなく、付属のあんをかけるだけで食べられるインスタント麺『アルキメンデス』といった商品も販売しました」

 ネーミングに加え、CMにアン・ルイスを起用する(“あんかけ”だけに)というチャレンジングすぎる姿勢も、パイオニアだからこそ。事実、今では当たり前となった“電子レンジで温められるレトルト食品”をいち早く取り入れたのもボンカレーだ。

「どの家庭にも電子レンジが普及している時代だったので、フタを開け、箱ごとレンジ調理できるボンカレーを提供できないかと考えました。

 しかし、これまでのパウチだとレンジ加熱ができません。そこでレンジで加熱しても破裂しないパウチを新たに開発し、'03年に販売しました」