在宅介護を始めて4年がたったころ、安藤さんは介護うつを患ったことも。母は寝たきりになり、鼻から管を通して栄養を摂取する経管栄養を始めた。安藤さんは仕事もしながら夜中の2時間おきの痰の吸引や経管栄養、排泄の世話などを1人でこなすうちに寝る時間が減り、次第に心もすり減っていった。

「朝や仕事のときにはヘルパーさんにも来てもらいましたし、家族も体位交換などは手伝ってくれましたが、下の世話などは自分がやらなきゃという気持ちでした。皆さんには介護を1人で抱えず、人に任せてほしいですね」

 また、自分が介護されないよう意識するのも大切、と安藤さん。

「そのためには生活力をつけて、常に頭を働かせていること。特に炊事は頭を使いますから男性もできるようにしたい。奥田もこの10年で、炊事、掃除、洗濯、皿洗いなどなんでもやるようになりました」

 家族が困らないよう、あらかじめ老後や死後の話もしておくとよい、と安藤さん。

「私は認知症になったらさっさと施設に入れて、担当の介護士さんは私好みの男の子にしてと伝えています(笑)。死んだらつけまつげをつけてきれいにして棺桶に入れて、ロックをかけながら楽しく見送ってほしいですね」

(取材・文/野中真規子)