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ー 手が離れていく子どもに対し、義母への負担は年々増して
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ー 粗相を言い出せず、汚れた下着を押し入れに

 20年間義母の介護をしていたのは、歌手で俳優の荒木由美子さん(63)。夫で歌手の湯原昌幸さんとはおしどり夫婦で知られるが、結婚直後から義母の介護が始まっていた。

「結婚と同時に芸能界を引退、最初から姑とは同居を決めていました。結婚式の後、落ち着いたら新婚旅行をする予定が、2週間後に姑が足の血栓で倒れて入院。手術は成功し、姑はまだ60代だったので、すぐ復活すると思っていました」

手が離れていく子どもに対し、義母への負担は年々増して

 荒木さんは義母のリハビリも兼ねて、なるべく一緒に歩いた。義母は「娘ができてうれしい」と言って、どこにでもついてきてくれたという。

 しかし義母は次第にぼーっとする時間が増え、テレビを見ながら寝ることも増えた。食後に「ごはんはまだ?」と聞いてくることもあった。

「義母はこれまで自分がやっていた3度の食事の支度や昌幸さんの世話などの家事を全部私に任せて身体を動かす機会が減り、次第に頭も衰えていったのだと思います」

 そのうち、ごはんを食べていないと言い張るようになり、「ここにお財布を置いてあったんだけど知らない?」など荒木さんを疑うような言動も。

「でも普通の会話もできていたし、几帳面な義母が認知症になるとは思えず、湯原さんや自分の親にはもちろん、友達にも言えずに、モヤモヤしていました」

 義母が血栓の原因であった糖尿病の悪化で入院していたとき、湯原さんに義母の症状をやっと打ち明けた。

「彼はまったく気づいていなかったようで、ショックを受けていましたが、この先も相談に乗ってもらうことを約束しました」

 それから義母に診察を受けさせるため、毎日の行動パターンをメモして病院へ行くと、義母が認知症だと判明した。

「病名がわかるまで5年。医師からは『もっと早く言えばよかったのに』と言われました。息子の子育てと両立しながら引き続き自宅で介護をしていましたが、子育てはどんどん手が離れていくのに対し、義母はどんどん手がかかるようになっていきました」