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ー WBCでの盛り上がりが追い風に

 国際オリンピック委員会(IOC)は10月16日、'28年に行われるロサンゼルス五輪の追加競技に野球、ソフトボールなどを採用すると発表した。

 野球は'21年の東京五輪で侍ジャパンが金メダルを獲得したが、'24年のパリ五輪では実施競技から除外されるため、2大会ぶりの復活。メジャーリーグで活躍する大谷翔平の出場も期待されている。

「これまでメジャーリーグ機構は、シーズン中に行われる五輪にメジャーリーガーの参加を認めておらず、マイナーリーグに所属している全盛期を過ぎた選手や将来有望な若手選手らがアメリカ代表として選ばれていました。そのため、大谷選手も東京五輪には出場していません。ですが、ロサンゼルス五輪では、メジャーリーグ機構がメジャーリーガーの参加を確約。そのため、大谷選手も出場できる見込みとなりました」(スポーツ紙記者、以下同)

 野球の復活には“大谷効果”もあったようだ。

「3月のWBCに初出場した人口約1051万人のチェコで、日本戦の中継を累計84万人が視聴するなど、これまで野球が盛んでない国で注目されたことも、復活の好材料となりました。WBCがヨーロッパでも注目されたのは、大谷選手といったスター選手が出場した影響があります。トップのスター選手が参加するということもあり、IOCも承認したのでしょう」

WBCでの盛り上がりが追い風に

 メジャーリーガーの参加が確約され、野球が五輪に復活したのはどういった要因があったのか。アメリカで取材をするスポーツライターの梅田香子さんに話を聞いた。

「以前の五輪やWBCの盛り上がりでは難しかったかもしれません。ですが、東京五輪で負けたアメリカ代表の選手たちが今までにないような悔しがり方をしていたので、選手側も“また五輪で対戦したい”という気持ちになったのだと思います。

 あとはやはり、WBCでの大谷選手の活躍などで、野球にあまり関心がなかった人たちも興味を持つようになりました。五輪から外れた競技を復活させるのは、野球関係者のそうとうな努力があったと思いますが、WBCでの盛り上がりが追い風になったことでしょう」

 世界的に注目される場で野球の魅力を発信することによって、競技人口を増やすという目的もある。

「アメリカ国内でも、ほかのスポーツと選手の取り合いになりますし、“世界レベルで盛り上げたい”という気持ちがメジャーリーグにはあります。ヨーロッパや中国の野球市場も拡大したいので、今回はメジャーリーグも五輪に協力しようとしています」(梅田さん、以下同)

 大谷が出場する可能性は高いのか。

「実際にメジャーリーガーを出場させようと思ったら、シーズンを10日間程度は中断させないといけません。ただ、その中断期間の分のお金を関係各所にしっかり払えば、反対意見もあまり出ないと思いますし、今のメジャーリーグは経済的に潤っているので、問題はないと思います。大谷選手も性格を考えれば、ケガがなく、体調が悪くなければ出場するでしょう」

 世界中を野球で熱狂させる“ロス五輪計画”。大谷が金メダルを首にかける姿が今から待ち遠しい。

梅田香子 スポーツライターとして、野球以外にもフィギュアスケートやバスケットボールなど多くのスポーツに精通。現在はアメリカに在住し、大リーグを中心に取材活動を行う