沢尻の不祥事のおかげ

 と振り返ってはみたものの、筆者はこの人に何の思い入れもない。それゆえ、今回の復帰も「別に……」という感想だが、ちょっと感謝したいこともある。

 まず、彼女が大河を降板したことで代わりに川口春奈が起用され、くすぶり状態から浮上できたこと。これが'22年度前期のNHK朝ドラ『ちむどんどん』でのメインキャスト入りにもつながり、川口には素晴らしいターニングポイントとなった。

 また、沢尻は当時、P&GとのCM契約を4年にわたって結ぶ予定だったとされるが、逮捕で破談に。その代わりに起用されたのが吉岡里帆で、2年後には松本まりかも共演するようになった。

 沢尻の不祥事のおかげで、好きな女優たちをいっぱい見られるようになったのである。

 ところで、吉岡や松本は最近の言葉でいうところの「あざとかわいい」系、川口は「サバサバ」系に分類できるだろう。沢尻もサバサバ系のイメージで、バラエティー番組では「芸能界を代表するサバサバ女子」と紹介されたことも。だが、実はそうでもないというか、わりと流されやすい人なのではという気がしている。

 例えば「別に……」騒動のあと、ワイドショーで泣きながら謝罪したことについて、3年後に「あれは間違いでした」と告白。

「前の事務所が謝罪しなくてはいけないと言った。結局、私が折れて」

 と、本音を明かした。

 蜜月時代は夫に言われて禁煙するほど夫唱婦随的だった結婚生活についても、離婚協議中「あまりいい思い出はない。悪夢みたい」と振り返っている。

 そして、今回の「復帰は考えていません」からの復帰だ。

沢尻エリカが主演する舞台『欲望という名の電車』のメインビジュアル
沢尻エリカが主演する舞台『欲望という名の電車』のメインビジュアル
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 かつての江角マキコのように、サバサバ系で売っていた人がそうではない一面を報じられ、やがて消えていった例もある。サバサバ系を見る世の中の目は、以前より肥えてきたのではないか。

 もちろん、沢尻ならではの華を好む人にとっては、今回の復帰は喜ばしいニュースだろう。ただ、それ以外の人にとっては「別に……」ということになりそうだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。