弁護士の見解

 こうした情報アカウントに法的な問題は無いのか。アトム法律事務所大阪支部の狩野祐二弁護士に話を聞いてみると以下のような回答が得られた。

――タレント個人情報売買を謳って金銭を受け取り、実際にはタレント個人情報を持っておらず別の目的(マルチ商法の勧誘、卑猥な行為の要求等)の場合、どのような法的問題があるか。

「タレント個人情報が虚偽であり、それを対価として何らかの要求をする場合には、その行為・結果によって刑事事件になり処罰される可能性があります。

 例えば、マルチ商法への勧誘の方法としてタレントの個人情報を提供したような場合には、合法なやり方でマルチ商法を行いさえすれば、単に勧誘のきっかけとしてタレントの個人情報をネタしただけということで刑事事件にはなりづらいと考えられます。

 他方で、虚偽のタレント個人情報を有償で売買した場合には、嘘をついて相手からお金を騙し取ったとして、詐欺罪が成立する可能性があります。

 また、タレントの個人情報を与えることを条件として18歳未満の者に対して、性的な写真・動画を送るように指示をして撮影・送信させたような場合には、児童ポルノの製造・所持として児童ポルノ禁止法違反に当たることになります。

 虚偽のタレント個人情報を用いて何をしたのか、によって問題が生じうるということになります」

――タレント個人情報(住所や学校、最寄り駅、本人の公式ではないSNSアカウント等)を金銭で売る行為、それを買う行為は、買う側・売る側にどのような法的問題があるか。

「タレント個人情報が本当であり、それを売買する場合には、刑事の問題になる可能性は低いです。

 住所や学校、最寄り駅等といった情報に関しては、その情報を得るためにタレントを待ち伏せしたり、ストーカー行為をすることは当然違法ですが、単にその情報を発信することだけでは名誉毀損罪等の刑事の法律に抵触することは通常ありません。

 タレントの個人情報を無断で第三者に売ることやタレントを隠し撮りした画像を第三者に売る行為は、プライバシー権や肖像権、パブリシティ権(肖像等の持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利)の侵害として、民事の損害賠償請求をされる可能性があります。

 売る側にはこのような責任が生じますが、買う側の責任は限定的であると考えられます」

 昨今、加熱するばかりの『推し活』だが、タレントが自身の情報を取引されて喜ぶことはない。むしろファンの問題行為がタレントのイメージを損なう可能性もあるだけに、節度を持って応援して欲しいものだ。