舞台上にスタッフが集まって撮影した記念写真(A子さん提供)
舞台上にスタッフが集まって撮影した記念写真(A子さん提供)
【写真】自死報道直後に情報誌表紙を飾った、“いじめに加担したとされる劇団員”

 後輩に対するいじめが横行していた宝塚の衣裳部だが、先輩たちへの陰口は噂レベルでも許されなかった。

“後輩が先輩の悪口を言っていた”という噂が出たらすぐに“犯人捜し”。先輩が仕事中に人を集めて“誰が言うたんや!”と後輩たちに詰め寄るのですが、名乗り出る人などいるわけがなく。結局、いつも適当に犯人を決めつけて叱責する“つるし上げ”が行われていたんです」

 過酷な衣裳部の一方、ほかの部署はどうだったのか。

宝塚の裏方は衣裳以外に大道具、小道具、背景、照明などでそれぞれ部署が分かれています。大道具など男性スタッフも多い部署は、口ではなく手が出ることも多々あったそうです。ただ、衣裳部は他部署との関わりも少なく閉鎖的だったので特に人間関係がドロドロしていたかもしれません……」

トップ男役を頂点にした“カースト”

 A子さんは、過酷な上下関係が続く理由として、徹底的な年功序列と残酷な雇用形態が影響していると語る。

「かつて宝塚のスタッフは、全員が阪急の社員でした。しかし、1998年に『株式会社宝塚舞台』という子会社ができてから、私のように裏方を希望する人は、子会社の社員として雇用されるようになったんです」

 その結果“本社組”と“子会社組”が混在し、“格差”が生まれるようになったという。

「高給の本社組と比較すると子会社組は薄給。加えて、新人は悪口を叩かれたり、無視され続けるのでどんどん人が辞めていきます。その結果、年長者が多い本社組が、若い子ばかりの子会社組をいじめるという構図が常態化してしまいました」

 この年功序列による“カースト地獄”は劇団員たちにものしかかっていたようだ。

トップ男役、トップ娘役、二番手の3人は専属の衣裳係がつくのですが、それ以外の劇団員は“その他大勢”という扱い。特に新人のヒエラルキーは低く、ベテランの衣裳部員からしょっちゅう叱責されていました

 若手を苦しめ続ける環境は、ある大騒動の引き金になった。

新人劇団員が舞台の本番直前に失踪したんです。劇団の施設内を捜しても見つからず、結局、演出を変えて開幕しました。失踪した団員はメイクしたまま、着替えるために羽織るタオル1枚だけを身体に巻いた状態で、街中で保護されたんです。極限状態が続いて心を病んでしまったのでしょうね。その後、退団したそうです」