昨年9月の還暦の誕生日に引退していたら……

 昨年9月の誕生日で還暦を迎えていた松本。

 過去の発言を振り返ると、引き伸ばしたとしても65歳には引退するというプランが彼のなかで濃厚だったように思えるが、おそらく以前は60歳で引退の可能性も検討していただろう。前述したように2019年の55歳の時点で、還暦前に引退していた上岡氏と島田氏の名前を出して引退論を語っていたからだ。

 “たら・れば”の話になるが、もし松本が60歳の誕生日でスパッと引退していれば、晩節を汚すことはなかったのかもしれない。

 もちろん松本が事前に還暦引退を宣言していたら、被害を訴えている女性たちがその前に彼を告発しようと考え、文春報道が早まっただけという可能性もあるので、なんとも言えないところではあるが……。

 文春報道が真実だと仮定した場合、被害女性たちの声に耳を傾けて心情に寄り添ってあげるべきだし、松本が引退する前に彼の所業が明るみになったことは、社会的意義が大きいというのは大前提ではある。

 そのため、このまま松本がテレビに帰って来ずに引退したとしても、それはある種の社会的制裁を受けたと考えることもできるだろう。

 しかし、松本がこのままなし崩し的に表舞台を去ることになるとして、彼のファンはそんな引退劇を望んでいなかったはず。松本の“笑い”を愛したファンたちは今、非常に複雑な心境であることは想像に難くない。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi