助成金で運営する大変さ、自治体の支援にも差がある

 全国に広がる子ども食堂だが、支援内容は自治体によって異なる。南谷さんの旧友でもあるAさんも他県で子ども食堂の運営に携わっているが、東京都ほどの助成はなく、無給で働くボランティアの善意に頼っているのが実情だ。

「役所の職員や議員に助成の必要性を訴えても、『あなたたちは好きでやってるんでしょ』という目で見られ、ボランティアスタッフの大変さをなかなかわかってもらえません。満足に食べられない子どもたちを見て、放っておけないから活動しているのであり、国や自治体から人件費を計上してサポートしてもらわないと、この先、持続していくのが難しくなります」(Aさん)

 また、クローズドではなく、オープンな子ども食堂に来る人の中には、特に生活に困っていない人もいる。

「安く食事ができるからと団体で来て利用される方もいます。シングルマザーのお母さんが、自分の子どもたちではなく若い彼氏を連れてやってくるといったことも……。一方で、子ども食堂があるという情報が届かず、本当に利用したい子どもが利用できないということも起こっています」(Aさん)

 南谷さんも助成金や寄付での運営に限界を感じ、ランドセルのリサイクル事業「ぐるぐるランド」も始めるようになった。

南谷さんが運営している「ぐるぐるランド」では、リサイクルしたランドセルを安価で提供している
南谷さんが運営している「ぐるぐるランド」では、リサイクルしたランドセルを安価で提供している
【写真】子ども食堂の箇所数の推移、近年はかなりの増加傾向

「貧困などでランドセルが購入できないご家庭に向けて、ユーズドランドセルを2000円から8000円ほどで安価再販を行っています。日本人だけでなく荒川区で暮らす外国人家庭でもご利用いただいています。使わないランドセルがある方はぜひ寄付をお願いします」(南谷さん)

 安定した組織運営のため、南谷さんは「NPO法人いきば」を作り、その中で子ども食堂事業とランドセルリサイクル事業を行うことにした。また、「就労継続支援B型ココレ」の開設も予定している。

「“ココレ”とは、イタリア語でCOCOLE、寄り添うという意味です。生きづらさを抱える子どもたちの居場所だけでなく、働く場所を見つけられない障がい者の方、社会との交流が閉ざされてしまっているひきこもりの方など、就労の継続が難しい方々の居場所をつくりたいのです。困難なことやわかってもらえないことがあっても、『大丈夫、できてるよ!』という安心感をココレで味わってほしいと思っています」(南谷さん)

南谷さんが運営している「ぐるぐるランド」では、リサイクルしたランドセルを安価で提供している
南谷さんが運営している「ぐるぐるランド」では、リサイクルしたランドセルを安価で提供している