日本初の世界農業遺産にも登録された石川県・奥能登(珠洲市)。その美しい景色の数々に目を奪われる主演映画『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』が公開される永作博美

「撮影期間中の1か月はずっと現地に滞在していました。ロケ地が海側だったので日本海を毎日眺めて過ごしましたね」

 故郷の奥能登に帰り、珈琲店を開いた岬(永作)。そこで出会った人たちと触れ合ううちに、大切なものに気づいていく……というヒューマンドラマだ。

「非常にシンプルで、潔い台本で芝居ができる、好みの作品でしたね。経験値が演技の幅を広げるので、年齢を重ねたことはこの作品にも大きく反映していると思います。いちばん大きな変化は子どもに媚びずに演技ができるようになったことですかね。ダメなことはダメときちんと言えるようになったり、子どもに対しての基準ができたことは演じるうえでもプラスになっています」

 匂いが伝わってきそうなほど印象的なのが、永作演じる岬がコーヒーを淹れるシーン。

「コーヒーって淹れるときにすごくふくらむんですけど、静かな躍動感というか。あれが心地よいですし、落ち着く時間ですね」

 出身地である茨城県が『都道府県魅力度ランキング』で2年連続最下位に。永作さんは“アピールが下手”と残念がる。

「実家の裏には霞ヶ浦が海のように広がっているのですが、あそこに沈む夕日を見ると、安心するんですよ。この映画のキャッチコピーである《今、心からの「ただいま」》じゃないですけど、帰ってきたって実感できる瞬間です。茨城県は美しい景色も多く、ロケーションサービスも充実しているので、いつか茨城で作品を撮影できたらいいですね」

さいはてにて
映画『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』 東京でひとり生きてきた焙煎珈琲店の女主人・吉田岬(永作博美)。幼いころに生き別れになった父を探すため、故郷である能登に戻り店を開くことに。そこで出会ったのはキャバクラで働くシングルマザーの山崎絵里子(佐々木希)とふたりの子どもたち。彼女たちとのふれあいの中で、岬は大切なものに気づいていく……。2月28日、全国ロード―ショー。